
世界最大の自動車市場である中国での競争激化、米国の関税圧力、東南アジアの長期的な景気低迷——。2025年5月、日本の自動車業界は複合的な逆風の中で生産実績を発表した。トヨタ・ホンダ・スズキ・日産・ダイハツ・マツダ・スバル・三菱自動車の8社の世界生産合計は前年同月比3.6%減の197万1,394台で、4か月ぶりに前年実績を下回った。
国内生産も5か月ぶりに減少に転じ、海外生産は2か月連続のマイナスが続いた。中国での販売不振はすでに16か月連続という数字で現れており、トランプ関税の影響も徐々に表面化し始めている。
8社合計の世界生産、4か月ぶりに前年割れ
2025年5月、日系自動車8社の世界生産合計は197万1,394台で前年同月比3.6%減となり、4か月ぶりに前年実績を下回った。前年実績を上回ったのはトヨタ、ダイハツ、スバル、三菱自動車の4社のみだった。海外生産は136万7,038台で4.3%減となり、2か月連続で減少した。
地域別では北米が3か月ぶりにマイナス(同3.7%減)に転じ、中国は16か月連続の減少(同2.5%減)を記録した。東南アジアでもタイなど主要拠点での不振が続いている。国内生産は60万4,356台で2.0%減となり、5か月ぶりに減少に転じた。
日産は国内生産が15か月連続のマイナス、スズキはレアアース規制の直撃を受ける
8社の中で最も厳しい状況に置かれているのが日産だ。5月の世界生産は前年同月比16.5%減の22万9,645台で、12か月連続のマイナスを記録した。国内生産も16.8%減となり、15か月連続で前年を下回っている。北米向け主力車種のエクストレイル(北米名ローグ)の台数減少と、セレナ・ノートなど国内販売の不振が同時に響いた。輸出も30.3%急減し、7か月連続で前年を下回った。
ホンダも10か月連続のマイナス(同5.5%減)が続いた。EV競争の激化を受けて中国国内の複数工場を閉鎖するなど生産体制を見直した結果、中国生産が14.4%減少し、アジア全体では12.5%減と13か月連続の下落となった。マツダも4か月連続のマイナス(同10.0%減)で、日産に次ぐ落ち込みとなった。前年の新車効果で高水準だったMAZDA CX-90の北米向け生産が39.5%急減したことが主因だ。
スズキは国内生産が14.1%減という異例の水準に落ち込んだ。中国のレアアース輸出規制の影響で相良工場(静岡県牧之原市)でスイフトの生産を一時停止したうえ、欧州向けジムニー・イグニスの生産終了も重なり、輸出も26.0%減少した。一方、世界生産の約70%を占めるインドでは、SUV販売の好調と新ラインの稼働効果により前年比0.7%増となり、8か月連続のプラスを維持。5月として過去最高を更新した。
トヨタは5か月連続で増加、ダイハツは認証不正問題からの反動増
そうした中でも健闘したブランドもある。トヨタの世界生産は全体では前年比0.7%の減少となったが、海外販売とグローバル販売は5月として過去最高を更新した。中国では新型EV「bZ3X」の受注好調に加え、政府補助金と連携した販促戦略が効果を上げ、前年同月比15.2%増となり、5か月連続のプラスを達成した。
海外生産は全体で前年比1.5%増となり、メキシコがカムリ・RAV4などを中心に15.7%増加して北米生産を牽引した。国内は稼働日不足などで5.4%減となったが、輸出は10.6%増で5か月連続の増加となった。
ダイハツは8社中唯一の2桁増(同11.9%増)を記録した。前年に認証不正問題で国内生産が大幅に落ち込んだ反動から、国内生産が64.6%急増。登録車は94.7%増と5月として過去最高を更新した。ただし海外生産は、インドネシアで22か月連続のマイナス(同25.1%減)が続くなど、全体では16.2%の減少となった。
スバルは新型フォレスターの好調に支えられ、2か月連続のプラス(同2.3%増)を維持した。国内生産は3.0%増となり4か月連続で前年を上回ったほか、唯一の海外生産拠点である米国工場も7か月ぶりに増加(同1.3%増)に転じた。三菱自動車はインドネシアで輸出向けエクスパンダーが37.4%増と急伸し、海外生産が7か月ぶりに増加(同3.9%増)に転じた。全体でも2か月連続のプラス(同4.4%増)を維持している。
関税・中国・東南アジアの三重逆風、短期解消は困難との見方
2025年5月の生産実績は、日本自動車産業が直面する複合的な逆風を改めて数字で示す結果となった。中国EV市場の競争激化による販売不振は16か月連続マイナスという形で続いており、トランプ関税の影響も徐々に可視化されている。
東南アジアの景気低迷もなかなか回復の兆しが見えない。各社は新型車の投入など下期に向けたプラス材料を抱えているが、米国の関税問題と中国市場の構造的な競争激化、東南アジアの景気低迷という三重逆風が短期間内に解消される可能性は高くないと業界では広くみられている。