



トヨタのハイブリッド車を長年支えてきたニッケル水素電池が、静かに舞台裏へ退こうとしている。トヨタは自社のハイブリッド全ラインアップのバッテリーを、ニッケル水素からリチウムイオンへ切り替える計画を公式発表した。効率向上とコスト削減という現実的な狙いから、長く実証されてきた技術からあえて舵を切る決断だ。
転換はすでに具体的なタイムテーブルに沿って進む。日本国内で新車約60万台分のバッテリー生産能力を、2027〜2028年にリチウムイオン方式へ切り替える方針だ。CAOの東崇徳氏は「ニッケルからリチウムへの切り替えをやっていこうという計画」と説明し、車両一台あたり数万円のコスト削減効果を見込む。代表モデルのRAV4はすでに切り替えを終えている。
転換はハイブリッドにとどまらない。トヨタは純電気自動車向けにバイポーラ型リチウムイオンセルを開発中で、最大621マイル(約1,000km)の航続距離を狙う。さらに開発を進める全固体電池は、10分未満で残量を10%から80%まで充電でき、最大745マイル(約1,200km)の航続距離を目指す。中国CATLなど外部の電池専門企業とも連携し、開発を加速させている。
背景にはトヨタの好調な業績もある。2026年4〜6月期の電動車販売台数は前年同期比12%増の141万台となった一方、全体の小売販売台数は3.5%減の255万台にとどまった。電動化部門の成長と全体販売の後退が同居する中、原価を下げて収益性を確保しようとする今回の転換は、トヨタが次の時代への備えを進める象徴的な動きといえる。