
エタノール混合比20%(E20)から100%(E100)まで幅広く対応するフレックス燃料システムが、インドの国民的コンパクトカー「ワゴンR」に初めて搭載された。マルチ・スズキが2026年6月4日に公開した新ラインナップ「ワゴンR FFV」の核心は、まさにこの対応幅の広さにある。車載システムが燃料中のエタノール濃度を自ら検知し、噴射量と点火時期を最適に制御する仕組みのため、ドライバーは燃料の種類を意識することなく普段通りの走行が可能だ。植物由来のバイオエタノールを使用することで、二酸化炭素排出の抑制はもちろん、粒子状物質(PM)削減による大気汚染対策としての効果も併せて期待されている。
このシステムが搭載されたベースモデルの歩みにも触れておきたい。ワゴンRは1999年にインド市場へ初投入されて以来、独自の進化を重ねてきたコンパクトカーで、2019年から続く3代目モデルは全長3655mm、全幅1620mm、全高1675mm、ホイールベース2435mmの車体を備える。日本の軽自動車規格より一回り大きいこの数値が、室内空間においてコンパクトSUV「クロスビー」に匹敵するゆとりを生み出している。
パワートレインの構成も多彩だ。68.5馬力を発生する1リッター直列3気筒と、90.9馬力の1.2リッター直列4気筒から選択でき、トランスミッションは5速MTとAGS(オートギアシフト)の2種類が用意されている。FFV仕様は、この既存ラインナップの高い実用性の上に、フレックス燃料への対応力を加えた形だ。
発表会に出席したインド政府閣僚は、バイオ燃料普及の意義について、原油依存度の緩和にとどまらず、原料となる農産物の需要創出を通じた農村経済支援にまで広げて説明した。国家の成長戦略という観点からも、今回のフレックス燃料車量産は重みのある案件として扱われている。
この発表を受け、ユーザーの間ではさまざまな反応が広がっている。「普段通りに乗れるなら使い方の幅が広がりそう」という利便性への期待、「燃料価格の変動に対応しやすそう」という経済性の観点からの声、そして今後の普及拡大を望む声が寄せられている。長年にわたり現地の足を支えてきたベストセラーモデルが、環境対応車としてどのように広まっていくのか、市場の次の動きが注目される。