
インフレと金利上昇が同時に進む時代、クルマは単なる移動手段ではなく、家計戦略そのものを問われる買い物になりつつある。
日本銀行は2026年6月16日、政策金利を0.25%引き上げ、1.0%とした。2025年12月以来およそ半年ぶりの利上げであり、この水準は約31年ぶりとなる。
住宅ローンへの影響がニュースの中心を占めているが、実は住宅以上に生活実感として響いてくるのが自動車の購入だ。物価上昇と金利上昇が重なる今、クルマを買うという行為そのものが、以前より慎重な計算を求められる消費へと変わってきている。
ここで、そもそもなぜ金利が引き上げられるのかを整理しておきたい。金利が上がれば、個人も企業も借り入れコストが増し、ローンを組んで行う高額消費は自然と抑えられる。その結果需要が落ち着き、物価上昇圧力も和らぐ——これが中央銀行の狙いだ。低金利時代には「多少高くても売れる」という構造が成立していたが、金利上昇局面ではむしろ価格を抑えなければ売れない市場へと構造自体が変化する。消費者側にも預金金利の上昇や物価の安定という恩恵はあるものの、マイカーローンや住宅ローンの返済負担が増すという影も同時について回る。
こうした局面で、クルマを選ぶ際にはどこに軸足を置けばよいのか。3つの視点から考えてみたい。
まず新車については、人気車種を軸に据えるのが得策だ。クルマは購入した瞬間から価値が下がっていく資産だが、人気車種はその下落カーブが緩やかになる。国内需要に加え、円安を背景とした海外需要も重なり、中古車価格が比較的維持されやすいためだ。つまり人気車種を選ぶことは、売却時の損失を抑えて実質コストを下げる戦略にほかならない。とはいえ、人気車種には納期の長さという弱点もあり、半年から1年以上待つケースも珍しくなく、場合によっては受注自体が止まってしまうこともある。「今すぐ欲しいから中古で」という判断にも注意が必要で、人気車種は中古市場でも高値がつくため、条件次第ではむしろ新車のほうが割安になることさえある。結局のところ、新車選びの基本は時間的な余裕を持って人気車種を狙うことに尽きる。
次に中古車では、あえて人気薄・ニッチな車種に目を向けるのも理にかなった選択だ。人気車種の中古車は価格自体が高い分、売却時にもある程度のリセールが見込めるが、ニッチな車種であれば年式が新しく走行距離も短いうえ、装備まで充実した割安な個体に出会える可能性が高まる。売却時のリセールはさほど期待できないとしても、そもそもの購入価格が低いためトータルコストは抑えやすく、他人とかぶりにくいという満足感も得られる。
そして3つ目、ローンは負担としてではなく、戦略として捉え直す視点も欠かせない。金利上昇局面ではローンが敬遠されがちだが、使い方次第ではむしろ有効な手段になり得る。利息負担が生じるのは確かだが、ローンを活用して手元資金を残しておけば、そのお金を投資に回したり、将来のライフイベントや緊急時の備えとして確保しておいたりできる。「手元に資金を残す価値」は決して小さくない。頭金を厚めに設定したり、借入期間を適切に調整したりすることで、利息負担自体をコントロールすることも可能だ。「一括か、ローンか」という二択ではなく、資金効率という物差しで判断することが肝心といえる。
物価と金利がともに上昇するこれからの時代、クルマはもはや単なる移動手段ではなく、金融的な意思決定が問われる買い物へと性格を変えつつある。新車ではリセールバリューを、中古車ではニッチ車種の戦略性を、そしてローンでは資金効率を、それぞれ意識するだけで、同じクルマを買うにしても総支出額は大きく変わってくる。人生でも指折りの大きな買い物であるからこそ、十分な情報収集と自分なりの戦略を持つことが、満足度の高いカーライフへの近道になる。