トヨタのイノーバ・ゼニックスは、コンパクトなボディながら、室内の2列目空間はビジネスクラスの航空機シートをそのまま移したかのようなレベルとなっている。さらに7人乗りファミリーカーでリッター当たり20.8kmの燃費を実現した。

トヨタ・イノーバ・ゼニックスはミニバンというよりSUVに近い前面デザインを採用している。
出発点から異なる。従来のイノーバは東南アジアで荷物を積んで山道を走るフレームボディのディーゼルトラックだった。トヨタは3世代目のゼニックスで、そのコンセプトを完全に刷新した。カムリやクラウンに採用されるTNGAプラットフォームベースのモノコック構造に転換したのだ。骨格からトラックを高級セダンへと生まれ変わらせた。乗り心地が大きく向上したのは当然の結果だった。
外観も一新された。トヨタの大型SUVであるセコイアからインスピレーションを得た六角形のハニカムグリルが正面を支配する。鋭い印象を与えるトライアイLEDヘッドランプの下には、方向指示器を兼ねる水平型DRLを配置した。ミニバン特有の鈍重で平坦な顔つきは影も形もない。後面はさらに印象的だ。立体的に突き出たフルLEDリアコンビネーションランプが広くて低い車体姿勢を強調し、偽マフラーチップではなく本物のステンレス製排気口で仕上げている。

全長4,755mmの車体に2,850mmのホイールベースを詰め込み、空間効率を最大化した。
サイズこそがこの車の真骨頂だ。全長4,755mmながら、ホイールベースは2,850mmを確保。コンパクトな全長に対して長いホイールベースを実現した。その秘訣はショートオーバーハング設計にある。車輪を車体の端まで極限まで押し出した。結果、駐車の容易さと広い室内空間を両立させた。床高は390mmだ。SUVの地上高を確保しつつ、乗降性は階段一段分ほどの低さに抑えた。高齢の親や幼い子供を乗せるのに、これ以上便利な構造はないだろう。

ビジネスクラスを超える2列目空間とフラットフロア
2列目のキャプテンシートとオットマン付レッグレストは、イノーバ・ゼニックスの核心的な競争力だ。
室内に足を踏み入れた瞬間、この車を選ぶべき理由が明確になる。2列目にはパワーオットマン付キャプテンシートを採用した。ボタン一つで足置き台が上がり、背もたれが倒れる。長距離家族旅行でビジネスクラスの航空機に乗っているような錯覚を覚えるほどだ。個人用サイドテーブルを広げれば、子供のおやつを置いたり仕事をしたりできる。頭上にはパノラマサンルーフが広がる。従来型ミニバンの2列目で前席の後頭部だけを眺めていた時代とは全く異なる、上質な移動体験を提供する。
床面は完全にフラットだ。ハイブリッドバッテリーを前席下に巧みに配置した結果だ。2,850mmのホイールベースがもたらす空間をそのまま室内に活かしている。2列目シートを最後端まで押すと、足を組んで座れるほどの余裕がある。3列目へのアクセスも容易だ。3列目は大人が座っても膝が胸に当たるような窮屈さはない。3列目シートは50:50の分割で床に完全に格納でき、広大な荷室スペースを確保できる。キックセンサー付パワーテールゲートを標準装備した。両手に荷物を持っていても、足を動かすだけでトランクが開く。

運転席はフローティングディスプレイと広い視界を中心に設計されている。
2.0リッターハイブリッドが叩き出す20.8km/Lの燃費
トヨタが選んだパワートレインは2.0リッター自然吸気アトキンソンサイクルエンジンだ。ライバルが1.6リッターターボで性能を追求する中、ハイブリッドの先駆者トヨタは別のアプローチを採った。システム最高出力は186PS、電動モーターの最大トルクは200Nmだ。7人乗車時の0-100km/h加速は9.5秒で、トランスミッションは存在しない。トヨタのeDriveテクノロジーがエンジンとモーターの出力を精密に制御し、発進から加速まで違和感なくスムーズな走りを実現する。
燃費性能がこの車の最大の武器だ。タイの公式基準でリッター当たり20.8kmを誇り、7人乗りファミリーカーでこの数字が出るとは信じがたい。市街地走行では電動モーターが頻繁に介入し、ガソリン代を半分以下に抑えられる。満タン時の走行可能距離は1,000km以上で、家族旅行中、給油の心配をする必要がない。ハイブリッドバッテリーの保証期間は8年16万kmだ。ニッケル水素バッテリー168セル構成で、温度変化に強く耐久性が実証済みだ。

2.0リッターハイブリッドと優れた燃費性能は、ゼニックスが提示する最大の魅力だ。
安全装備と価格:トヨタセーフティセンス3.0搭載
安全装備も充実している。最新のトヨタセーフティセンス3.0を全グレードに標準装備した。全速域レーダークルーズコントロールが時速0から180kmまで先行車との車間距離を自動維持する。レーントレーシングアシストと衝突回避支援型プリクラッシュセーフティは、前方カメラとレーダーが運転者より早く危険を察知する。360度パノラミックビューモニターも標準装備で、全長4.7mの大きな車体でも駐車時のストレスがない。後部座席のデュアルディスプレイと車内Wi-Fiにより、子供たちは映像を楽しみ、親は運転に集中できる。
欠点も指摘しておく必要がある。リアサスペンションがトーションビーム式だ。マルチリンクサスペンションを採用するライバル車に比べると、一人乗車時の後席乗り心地は若干物足りない。インフォテインメント画面の解像度は競合モデルに比べてやや見劣りする。室内下部のハードプラスチック素材も、価格帯を考慮すると改善の余地がある。加速時にエンジン音が室内に侵入する点も考慮すべきだろう。

リアビューは立体的なリアランプと幅広に見える車体比率でSUV的な印象を強調している。
東南アジア市場の最上級ハイブリッドグレードは、現地価格で日本円換算約530万円相当に設定されている。同クラスのハイブリッドミニバンが約540万円台半ばに達する中で、この仕様なら十分に競争力を備えているといえる。