
中国の自動車業界が、日本の「軽自動車」エコシステムをモデルとした低価格EVの標準規格導入を推進し、EV市場戦略の見直しに動き出している。高齢者や農村地域の消費者を主なターゲットとする新たなEVカテゴリーの創設を目指す構想だ。
海外メディアの報道によると、この提案を打ち出したのは中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹事務局長だという。崔事務局長は中国自動車市場の回復を妨げる主因の一つとして低価格車セグメントの縮小を挙げ、標準化された低価格EV規格の整備が必要と訴えた。
二極化するEV市場と安全性の課題
現在の中国EV市場は、高価格帯と超低価格帯という二極構造になっている。高価格帯では先進機能を前面に打ち出した高性能EVの競争が激化する一方、農村部や高齢者の間ではラオトウラー(老頭楽、超小型低速EV)と呼ばれる超小型の低速電気自動車が広く普及している。
問題は安全性だ。低速EVは低価格が魅力だが、エアバッグや車体補強といった基本的な安全装備を持たない。中国工業情報化部によると、2012年から2016年にかけて低速EVに関連する事故は約83万件に上り、約1万8,000人が死亡したとされる。中国政府は2024年から、当該車両の運行を全面的に禁止している。
中国の自動車業界はこの間隙を埋める中間カテゴリーの必要性を認識しており、低価格でありながら安全規格に準拠したEVを市場に投入し、新たな需要層を取り込む狙いがある。
日本の軽自動車規格が中国のモデルに
具体的な参考例として挙がっているのが日本の軽自動車だ。国内軽自動車市場は全長3.4m以下、排気量660cc以下という規格のもとで発展してきており、今年上半期の国内乗用車販売において、軽自動車のシェアは約33%を占める。年間販売規模は約167万台に上る。

崔東樹事務局長は中国型の低価格EV規格として、車体サイズ・出力・最低航続距離などの基準設定を提案した。加えて、高齢者の運転参入障壁を下げることを目的とした簡略化免許「C7」の創設も提案に含まれている。
欧州の事例も取り上げられた。EUは全長4.2m以下のEVに追加の排出ガスクレジットを付与する政策を導入しており、これを受けてルノー5やフォルクスワーゲンのID.ポロといった小型EVの開発が進んでいる。
BYDなど各メーカーが独自展開を加速
こうした動きと並行して、中国の完成車メーカーも独自の展開を始めている。BYDは中国国内市場向けの小型EV「ラッコ(Racco)」を公開した。全長は3,395mmで、20kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードで180kmの一充電航続距離と、最大100kWの急速充電に対応するとしている。中国国内市場への投入は2026年夏が予定されている。
一方、中国市場では超低価格EVの展開も続いている。ベストゥーンポニーは5,000ドル(約80万円)未満で発売されており、奇瑞のQQ3は8,500ドル(約140万円)の価格帯で約5万7,000件の注文を集めている。トヨタのbZ3Cも約1万5,000ドル(約240万円)の価格帯で中国の合弁EV車種の販売上位にある。
中国業界では、こうした低価格EV規格の標準化が東南アジアやインドといった新興市場への足がかりにもなると見られており、小型・低価格EVへの需要が高いこれらの地域で新たな成長の柱として位置づける考えだ。