
グローバル自動車大手のトヨタが、米カリフォルニア州で数十億ドル規模の「関税還付金」を消費者と分け合うべきだとする、異例の大規模な集団訴訟を起こされた。
裁判所が違法と判断した輸入関税を企業が政府から取り戻す際、その費用を値上げの形で負担させられた消費者にも還付を受ける権利があるのか。先例のないこの論点が争われている。
報道によると、カリフォルニア州の原告であるアナニアス・コルネホさんは、トヨタ・モーター・ノース・アメリカを相手取り、カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所に集団訴訟を起こした。
米最高裁判決が発端、1,700億ドル規模の還付対象が浮上
今回の法的紛争のきっかけとなったのは、2026年2月に米最高裁が下した判決だ。同判決は、トランプ政権が「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき中国、カナダ、メキシコなど主要な輸入相手国に課していた広範な関税について、大統領の権限を逸脱したものとして大部分を無効と判断した。
この判決を受けて整備された連邦の処理制度を通じ、輸入業者が還付を受けられる関税の規模は、1,660億〜1,750億ドル(約26兆3,800億〜27兆8,100億円)に達するとされる。
米国税関・国境警備局(CBP)は「CAPE」と呼ばれる統合的な通関処理システムを稼働させ、報道によると5月11日時点で、すでに350億ドル(約5兆5,600億円)を超える還付金と利息を算定している。
しかし、この連邦制度を通じた直接の還付申請ができるのは「登録輸入業者」と「通関仲介業者」に限られ、最終消費者は還付の請求対象に含まれていなかった。
トヨタ、関税負担分を車両価格に転嫁したと原告側主張
集団訴訟の訴状によると、トヨタは関税の影響が及んだ2025年2月から2026年2月にかけて、日本、カナダ、メキシコなど輸入比率の高い部品や車両の調達を通じて、約97億ドル(約1兆5,400億円)の関税費用を支払ったという。原告側は、トヨタがこの関税費用を補うため車両を値上げし、消費者に転嫁したと主張している。
原告側は、トヨタが不当な関税を理由に車両価格を引き上げて消費者に負担を求めた以上、政府から関税還付金を受け取ることになれば、その利益を消費者に不当利得の返還という形で返すべきだと訴えている。訴訟の対象には、対象期間にIEEPA関税の影響を受けたトヨタ車を購入またはリースした米国内の消費者が含まれる。
統合サプライチェーンの弱点 トヨタ北米部門は19億ドルの営業損失
今回の訴訟は、自動車大手がサプライチェーンのコスト上昇に直面するなかで起こされた。各社は関税負担の一部を吸収しつつも、車両や部品の卸価格の調整は避けられなかった。
業界専門誌WardsAutoの報告によると、トヨタ・モーター・ノース・アメリカは2026会計年度(2025年4月〜2026年3月)に全体の販売台数が約8.5%増加したものの、関税関連費用の急増により、北米地域で19億ドル(約2,850億円)の営業損失という大きな打撃を受けたという。
これは、北米とアジアにまたがる統合的なサプライチェーンを持つ企業ほど、違法とされた関税の影響を大きく受けたことを示している。
訴訟に反対する立場からは、企業が通常の市場環境のなかで運営コストを吸収し再配分するのは正常な経営行為だとの主張が出ている。一方、訴訟を支持する立場からは、違法とされた規制を前提とした価格引き上げであり、その前提が失われて関税が還付される以上、消費者への配慮は当然だとの反論がある。
還付訴訟は他業種にも波及、返還を表明する企業と沈黙する企業
関税還付をめぐる訴訟は、トヨタだけの問題ではない。米国国際貿易裁判所に提起された関連の還付訴訟は複数の業種にわたって2,000件を超え、フェデックス、コストコ、北米日産など多くの大企業が関与している。
すでに一部の企業は還付金を顧客に返還する意向を示している。フェデックスは、自社が通関仲介の役割を担った取引について顧客に還付金を返す方針を示した。コストコは、還付による負担減を製品価格の引き下げなどに反映させるとしている。
一方、訴訟で被告となったトヨタは、潜在的な関税還付金をどのように扱うかについて、現時点まで公式な見解を示していない。
裁判所が、価格設定と関税負担との直接的な因果関係をどのように判断するかによって、米国の消費者物価や企業の還付対応をめぐる大きな転機となる見通しだ。