
貿易協定の変化がもたらした普及型モデルの消滅危機
米国市場で安価な価格帯を形成していたエントリークラスの車両が消える危機に直面している。トヨタ、日産などの主要完成車メーカーは、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)が更新されないか、内容が大幅に修正される場合、米国内での低価格車両の販売を継続することが困難だとの立場を示した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、サプライチェーンの変化によるコスト上昇が普及型モデルの市場競争力を深刻に損なっていると、自動車メーカーが警告していると報じた。
関税障壁と生産原価上昇の二重苦
かつて無関税の恩恵を受けていた部品が現政権の関税政策の変化により25%に達する税金が課され、企業の負担が増大している。ホンダ・シビックやトヨタ・カローラのように米国現地で生産される車両でさえ、北米全域にわたる部品サプライチェーンを活用する必要があるため、影響を受けている。従来のUSMCA体制では北米産部品の比率を満たせば無関税通関が可能だったが、現在は非米国産コンテンツに対する厳しい基準が適用され、長年維持されてきた供給体制が揺らいでいる。
米政府のリショアリング圧力と市場の現実
米政府は、自動車メーカーが米国内の製造施設を拡充し、生産拠点を完全に移転すべきだという強硬な姿勢を示している。米政府の関係者は規制緩和や税制優遇などの投資支援策を提示し、メーカーのリショアリングを促しているが、業界は人件費の上昇と原材料費の増加を理由に難色を示している。メキシコで生産される日産・セントラなど2万ドル(約320万円)前後の低価格モデルは、収益構造上関税の引き上げに耐えられない状況だ。
消費者負担の増加と今後の展望
米国内の新車平均価格が5万ドル(約800万円)に迫る中、低価格モデルの退場は消費者の経済的負担を増大させると見られる。米行政府は中国産部品使用制限と米国内生産要件強化を柱としたUSMCA改訂を検討中だ。完成車メーカーは関税免除の恩恵が維持されない場合、安価なモデルの販売を諦めざるを得ないと強調しており、今後の交渉結果によって米国自動車市場の車種構成が大きく変化する可能性が高い。