
ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループは、中国専用モデルを欧州で生産し、現地で販売する方策を検討している。これは業績の伸び悩みと生産体制の見直し圧力が強まるなかでの戦略的判断とみられる。
報道によると、オリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は関税負担と需要の鈍化が続くなかでも今年第1四半期(1〜3月期)の業績は比較的安定していたと評価する一方、現行の事業モデルのみでは十分な収益を確保することは難しいとの認識を示した。
フォルクスワーゲンは今年第1四半期の営業利益が前年同期比14%減の25億ユーロ(約4,500億円)を記録した。これは市場予想が前年並みの水準を見込んでいたことと比べると低調な結果と受け止められている。この流れが、フォルクスワーゲンに構造改革の必要性を公に認めさせる背景となった。

5万人削減と欧州工場稼働率の課題
同社はすでに大規模な構造改革計画を進めている。フォルクスワーゲンは2030年までにドイツ国内の全事業部門で約5万人の人員削減を検討しており、従来のコスト削減策だけでは長期的な競争力の確保は難しいと判断している。
とくに欧州域内の工場稼働率も重要な課題として浮上している。ドイツ北部にあるフォルクスワーゲンのオスナブリュック工場など一部の生産拠点は稼働率の低さが指摘されており、改善策として防衛産業との連携や、中国の提携先との共同生産が検討されている。
中国市場向け投資から逆輸入戦略へ
今回の戦略の中心にあるのは、中国との協力のあり方の転換である。フォルクスワーゲンはこの数年、中国市場向けに数十億ユーロを投じ、現地での研究開発や生産体制の強化を進めてきた。これにより、世界最大の自動車市場であり技術革新のスピードも速い中国市場に合わせ、製品ラインナップを機動的に再編してきた。

そのフォルクスワーゲンが、今度は逆に中国で開発したモデルを欧州市場に投入する方策を検討している。同社はどの中国専用モデルが欧州市場に適しているかを見極めており、中国の提携先と欧州工場の生産能力を共同で活用できるかについても分析を進めている。
中国EVメーカーの欧州シェア拡大
こうした取り組みについてフォルクスワーゲンが公に言及するのは初めてであり、欧州自動車産業全体にとっても重要な変化として受け止められている。中国自動車メーカーの欧州市場でのシェアは依然として限定的だが、徐々に拡大する傾向にある。燃料価格の上昇など外部環境の変化は、電気自動車(EV)を中心に展開する中国メーカーの競争力を押し上げる要因となっている。
フォルクスワーゲンは現在、約150のモデルを販売し、ポルシェやアウディなど多様なブランドを擁している。しかし市場環境の変化と収益性確保への圧力が同時に強まるなか、生産戦略とグローバルな協力体制を再編する動きが少しずつ具体化している。