
フォルクスワーゲンの電気ミニバン「ID.Buzz」が、米国市場で期待外れな販売成績を記録した。電気自動車専門メディア「クリーンテクニカ」によれば、米国では導入価格が6万ドル(約892万円)近くに達し、高額輸入関税(約27.5%)により他のEVより割高になってしまったことが要因とされている。
また、EPA基準の航続距離は234マイル(約370km)と短く、テスラやヒュンダイ、フォードなどのライバルモデルに見劣りし、ブレーキ警告灯の不具合や3列目シートのリコールも重なった結果、出荷台数は3か月で600台未満にとどまり、当初目標だった年4万台には遠く及ばなかった。
対照的に欧州市場では、2025年上半期にID.Buzzは約2万7,600台を全世界で出荷され、その大半が欧州で販売されている。フォルクスワーゲン・グループ全体の電気自動車出荷は欧州のみで前年同期比約90%増を記録しており、地域ごとのインフラ整備や消費者の好みが大きく影響している姿が浮き彫りになっている。
この米国での苦戦はホンダ「Honda e」やフォード「マスタング Mach‑E」、テスラ「モデルY」の地域ごとの成功・苦戦と同様に、電気自動車市場の地域性の強さを如実に示している。クリーンテクニカも「ある地域での不振が、EV市場全体の縮小を意味するわけではない」と指摘しており、むしろモデルと市場の相性が問われる状況だと説明している。
ID.Buzzの米国での挫折は、電気自動車が単なる技術戦ではなく、輸入関税、航続距離の基準、リコール対応、消費者の期待、インフラ状況など複合的な要因が絡む市場だという現実を示すきっかけとなった。欧州での好調を見る限り、ID.Buzz自体には魅力があるものの、米国向けにはさらなる市場適応が求められている構図だ。