「1980年代の日本を超える危機」米自動車産業、中国EV包囲網に敗北寸前

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米ワシントンに所在する情報技術・イノベーション財団(ITIF)は、11日(現地時間)に公表した報告書で、米国の自動車産業が中国の急速な市場攻勢に対抗するため、国家レベルでの統合戦略を早急に構築すべきだと警告した。

米国の自動車産業は1980年代に日本車の攻勢を受けた局面に続き、「第二の存立危機」に直面しているとの分析を示している。

科学技術政策を扱う国際的なシンクタンクであるITIFは、この日公開した3部作シリーズの最終報告書を通じて、米国が電気自動車(EV)、バッテリー、自動運転といった次世代モビリティの中核領域で、中国に主導権を奪われる恐れがあると指摘した。

ITIFのグローバルイノベーション政策担当副会長を務めるスティーブン・エゼル(Stephen Ezell)氏は「米国の自動車業界は1980年代に日本のリーン生産方式への対応に10〜15年を要し、その間に競争力を大きく損なった。同じ過ちを繰り返してはならない」と述べたうえで、「中国は補助金と巨大な生産規模を背景に、EVとバッテリー市場で主導権を握りつつある。米国政府には迅速かつ断固とした戦略的対応が求められる」と強調した。

累積貿易赤字3兆3,000億ドル、揺らぐ「製造業の柱」

報告書が示した統計は、米自動車産業の衰退ぶりを如実に物語っている。米国の世界自動車生産シェアは1965年に46%に達していたが、1990年には20%へ半減し、現在は14.7%まで縮小した。

米「ビッグ3」自動車メーカーの市場シェアも、同じ期間に92%から38%へ急落している。1963年から2023年までに積み上がった自動車貿易赤字は、現在の価値に換算すると3兆3,000億ドル(約520兆円)に達するという。

自動車産業は、単なる消費財市場を超え、米国経済の基幹を担う存在だ。自動車関連の産業エコシステム全体では、米国の国内総生産(GDP)の約5%に相当する1兆2,000億ドル(約190兆円)以上を毎年生み出している。

4万7,000人を超えるエンジニアを雇用し、研究開発(R&D)には毎年260億ドル(約4兆1,000億円)以上を投じているほか、5,600社以上の精密加工・鋳造関連サプライヤーを擁する。こうしたサプライチェーンが崩壊すれば、国防および先端産業全般の弱体化につながるというのが、ITIFの見解である。

一方、中国の追い上げは激しい。中国政府は2009年から2023年にかけて、EV分野に総額およそ2,309億ドル(約36兆5,000億円)規模の補助金を投じてきた。その結果、自動車産業がGDPに占める比率は、中国が米国の2.6倍に達している。

「バッテリーショット」など6つの重点戦略を提言、安全保障の視点からの取り組みを

ITIFは米自動車産業の再生に向け、政府と議会が推進すべき6つの国家戦略を提示した。

第一に、米国立標準技術研究所(NIST)の傘下に「先端プログラム事務局」を新設し、50億ドル(約7,900億円)規模の革新基金を運用することを提言した。

工場の近代化に向けては、ロボットおよび自動化技術を導入する企業に25%の税額控除を適用し、研究開発(R&D)税額控除の優遇措置を現行の3倍に拡大すべきだとも訴えている。

技術主権を確保する具体策としては、次世代バッテリー技術の確立を目指す「バッテリーショット(BatteryShot)イニシアティブ」の立ち上げと、自動運転車の普及に向けた「セルフドライブ法(SELF DRIVE Act)」の成立を求めた。

特に、中国による「重商主義的競争」から市場を守るため、中国製EVに対する100%の関税を維持しつつ、BYDやシャオミ(Xiaomi)といった中国企業による米国内での生産拠点設立や米企業の買収(M&A)を根本から阻止すべきだとする強硬姿勢も打ち出している。

日本の自動車業界関係者からは「米国がこれほど強力な保護主義と育成策を同時に打ち出すのは、それだけ中国EVの台頭を実質的な脅威と受け止めている表れだ」との声が聞かれる。米国市場での事業比重が大きい日系メーカーにとっても、米国の政策転換とサプライチェーン再編の動向は、慎重に注視すべき課題となりそうだ。

エゼル氏は「米国が自動車産業を国家の力と直結する戦略産業として位置づけなければ、最終的には自動車・バッテリー・ソフトウェアのサプライチェーン全体を中国に依存することになる。これは決して受け入れられるシナリオではない」と警鐘を鳴らした。

今回のITIF報告書は、米国の自動車産業政策が従来の「自由市場競争」の論理から、「国家安全保障と産業主権」を軸とする論理へと大きく転換したことを示している。

とりわけ、中国製EVの実質的な締め出しと大規模な補助金投入は、冷戦期における戦略資源管理の手法を想起させるものだ。

これは、グローバルサプライチェーンが「効率性」重視から「信頼性と安全保障」重視へと再編されつつあることを示しており、日本を含む同盟国に対しても、米国主導のバリューチェーンへの参加を巡る圧力が一段と強まると見られている。

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