
BMWの電気自動車が、国内で販売中のEVとして最長となる一充電走行距離を打ち立てた。2026年7月22日に発売された新型「iX3」は、WLTCモードで906kmという航続性能を誇り、2026年型「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」をはじめ複数の国際的な自動車賞にも輝いている一台だ。
iX3は、BMWが掲げる次世代ブランドコンセプト「ノイエ・クラッセ」の量産第1弾を担う。世界初公開されたのは2025年9月5日で、日本国内では同年5月25日から先行商談の受け付けが始まっていた。今回の発売でいよいよ納車段階に入り、実際の引き渡しは7月下旬以降を予定している。
まずボディサイズを見ると、全長4780mm、全幅1895mm、全高1635mm、ホイールベース2895mm。国内で人気の高いトヨタ「ハリアー」(全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mm)と比較すると、全長・全幅ともに40mm上回る一方、全高は25mm低く抑えられており、よりワイドで低重心なスポーティーな佇まいに仕上がっている。車両重量は2330kg、車両総重量は2605kgだ。
パワートレインには、前輪に最高出力123kW・最大トルク255Nmの誘導モーター、後輪に最高出力240kW・最大トルク435Nmの巻線界磁式同期モーターを配置。システム全体では最高出力345kW(469馬力)、最大トルク645Nmを発生する。通常走行時は後輪主体の駆動としながら、必要に応じて前輪を駆動に加える制御により、効率と走行性能の両立を図った。
こうした駆動制御の中枢を担うのが、モーター・ブレーキ・エネルギー回生・ステアリングを統合管理する高性能コントロールユニット「Heart of Joy」だ。搭載バッテリーは第6世代BMW eDrive技術による109.1kWhのリチウムイオン式で、一充電走行距離はiX3 50 xDriveが906km、iX3 50 xDrive M Sportが835km(いずれもWLTCモード)となる。
充電性能も見逃せない。BMWの電気自動車として初めて800Vアーキテクチャーを採用し、最大320kWの急速充電に対応した。条件が整えば、わずか15分の充電で約395km分の走行電力を補える計算だ。さらに今後導入予定の最大350kW級超急速充電器「SERA-400」を利用すれば、15分で最大約420km相当まで充電できるという。
デザイン面では、1960年代の「ノイエ・クラッセ」を現代的に翻訳した表現が随所に見られる。縦型のキドニーグリルに垂直配置のLEDヘッドライトを組み合わせ、発光式の「BMWキドニー・グリル・アイコニック・グロー」と併せることで、これまでのBMWとは一線を画す表情を作り出した。サイドはキャラクターラインを抑えた滑らかな面構成とし、ボディ同色のフラットドアハンドルやホイールアーチを採用。リアはBMW伝統のL字型テールライトを水平基調に再構成し、ワイド感を際立たせている。
室内で最も大きく変わったのは、従来型のメーターパネルを廃した上でBMWとして初めて導入した新しい操作システム「BMWパノラミックiDrive」だ。フロントウインドー下部を幅約110cmにわたって覆う43.3インチの「BMWパノラミック・ビジョン」に、ドライバー側へ17.5度傾けた17.9インチのセンターディスプレイを組み合わせる。奥行きのある表示ができる「BMW 3Dヘッドアップ・ディスプレイ」も採用し、実際の路面に重ねるようにナビ情報を映し出す表現も可能にした。パノラマガラスサンルーフや水平基調のコックピット、バックライト付きファブリック素材、新音響システム「BMW HypersonX」などが組み合わさり、開放的な室内空間を演出している。
運転支援機能では、高速道路上で条件を満たした場合に時速130kmまでステアリングから手を離して走行できる「ハイウェイ・アシスト」を搭載。ドアミラーを見るだけで車線変更を実行できる機能も、日本仕様のBMWとしては初の導入となる。ただしハイウェイ・アシストについては、2026年11月以降にソフトウエアアップデートを通じて順次利用可能になる予定だ。このほか、住宅への給電に対応するV2Hや、外部機器への給電が可能なV2Lにも対応する。
価格(消費税込み)はiX3 50 xDriveが982万円、iX3 50 xDrive M Sportが1034万円。発表の場でBMWジャパンの上野金太郎社長は、906kmという航続距離が電気自動車に対する不安への明確な答えであるとの考えを示し、これからは航続距離そのものよりも、どれだけ快適で心躍る移動体験を提供できるかが問われる時代に入ったという趣旨を語った。
「ノイエ・クラッセ」の第1弾として送り出された新型iX3は、デザイン・電動化技術・車載ソフトウエアのすべてを刷新した一台であり、今後展開されるBMWの新世代モデル群の方向性を先取りする存在となっている。