ニッケルもコバルトも要らない?日産が「硫黄」で挑む全固体電池、中国勢を下回るコストへ

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日産が次世代EVの核心技術として注目される全固体電池のコスト競争力確保に向けた取り組みを本格化している。高価なニッケル・コバルトの代わりに硫黄(Sulfur)ベースの材料を活用して生産コストを抑え、中国企業との電池競争で優位を確保するという戦略だ。

日産とGelionが組む全固体電池プロジェクト

電気自動車メディアElectrekの報道によると、日産は英国の電池企業Gelion、日産テクニカルセンターヨーロッパ(NTCE)、オックスフォード大学と共同で「コスト効率的で堅牢な全固体リチウム硫黄電池」(Cost-effective, Resilient Solid-state Li-S)の開発プロジェクトを推進する。

プロジェクトは3年間にわたって進められ、総事業費は約340万ポンド(約450万ドル、約7億2,000万円)規模となる。このうちGelionは英国政府の助成金として約240万ポンド(約320万ドル、約5億1,000万円)を受け取る。

なぜ「硫黄」なのか——材料選択の狙い

焦点となるのは、硫黄ベースの正極材料を活用した全固体リチウム硫黄電池の開発だ。Gelionが開発した硫黄ベースの正極活物質「NES(Nano-Encapsulated Sulfur)」は、既存の電池に使用される高価なニッケルとコバルトを、相対的に安価で豊富な資源である硫黄に置き換えることを特徴とする。

3者はこの連携を通じて、高エネルギー密度と高出力を同時に実現できる全固体リチウム硫黄電池パックの開発に注力する方針だ。日産が自社の全固体電池技術を提供し、Gelionが硫黄ベースの正極材技術を担当する。

業界では、今回の技術が中国の電池企業が主導する価格競争に対応できる代替手段となり得るかどうかが注目されている。投資会社Longspur Capitalは最近の報告書で、Gelionの硫黄ベースの正極技術が既存のリチウムイオン電池はもちろんナトリウムイオン電池の性能向上にも活用できると評価した。また、全固体電解質技術が次世代電池市場の核心的な革新となる可能性が高く、Gelionがその分野の正極材技術も同時に開発していると分析した。

商用化への道筋と業界競争

商用化のスケジュールも日産のEV戦略と足並みをそろえている。Gelionは2027年度中に商用プロトタイプの公開を目指しており、これは日産が2028年度の量産投入を目指すスケジュールと合致している。Longspur Capitalは、日産が今後全固体EVのコスト競争力確保に向けてGelionの硫黄ベースの技術を積極的に活用すると予測した。

GelionのUK・欧州部門責任者でプロジェクトリーダーのアドリアン・アミギュ氏は「今回のプロジェクトは英国と日産、そしてGelionすべてにとってゲームチェンジャーとなり得る」と述べ、「硫黄ベースの技術は全固体電池と特に高いシナジーを生むことができる」と語った。

日産は生産インフラの整備も着実に進めている。同社は2025年1月に横浜工場に初の全固体電池パイロット生産ラインの稼働を開始しており、米国の電池技術企業LiCAP Technologiesとの量産協力も進めている。日産はLiCAPの乾式電極プロセス「Activated Dry Electrode®」を活用することで、従来の電池製造工程で必要だった乾燥・溶媒回収の工程を削減し、生産コストの低減と効率向上が期待できるとしている。

ただし、全固体電池の技術競争は日産だけの舞台ではない。中国ではBYDをはじめとする複数の企業がすでに全固体電池のプロトタイプ試験を進めており、一部企業は数か月以内に全固体電池搭載車両を公開する準備を進めているとされる。BYDも硫化物系全固体電池を開発しており、小規模生産を経て2030年頃に大量生産体制を構築する計画だとしている。

一方、日産はサンダーランド工場への投資も拡大している。同社は先ごろ、中国の自動車メーカー奇瑞汽車(チェリー)の英国法人との間で、サンダーランド工場における車両の委託生産を検討するための覚書(MOU)を締結した。電池技術の開発と生産体制の再編を並行して進め、EV市場での競争力強化を図っている。

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