
インドネシアで開かれたモーターショーの会場で、ヒョンデが新型電気ミニバン「ネイラ(Neira)」を披露した。3列シートを備えたこの電気ミニバンは、ファミリー層の需要が大きい東南アジア市場を狙った新型車のように見えた。ところが、車両を注意深く見た人々は、すぐに妙な既視感を覚えた。どこか見覚えのあるシルエットと、なじみのあるランプデザインのためだ。
結論から言えば、ネイラはヒョンデが完全に新しく設計した車ではない。すでにインドで販売されているキア・カレンス・クラビスEV(Kia Carens Clavis EV)をヒョンデ仕様に仕立て直した、いわゆる「バッジエンジニアリング」モデルだ。今回は、ヒョンデがなぜ、どのようにキアの車を自社ブランドとしてよみがえらせたのかを詳しく見ていく。
インドネシアで披露されたヒョンデ・ネイラ
ネイラが初めて姿を現したのは、2026年ガイキンド・インドネシア国際オートショー(GIIAS 2026)だ。ヒョンデは同車を3列シートの電気ミニバンコンセプトとして紹介した。全長は4,550mmで、最大7人が3列に分かれて座れる大きさだ。多人数乗車のファミリーカー需要が堅調なインドネシアをはじめとする新興市場を狙う戦略モデルといえる。

ヒョンデは同モデルをインドネシアで直接生産する計画で、チカラン(Cikarang)にあるヒョンデのインドネシア工場(HMMI)で、2026年末までに組み立てを開始する予定だと明らかにした。
細部を見るほど明らかになるキアの面影
ネイラが興味深いのは、別にベース車が存在するためだ。ベースとなったのは昨年インドでデビューしたキア・カレンス・クラビスEVで、ヒョンデは大幅な変更を加えず、ブランドだけを付け替えた。まず、キアのエンブレムがあった場所にはヒョンデのロゴを配置し、フロントバンパーには細いインテーク形状、樹脂製クラッディングにはシルバーのアクセントを加えた。

目立つ変更は、ロアバンパーとサイドモールを手直しし、新しいアルミホイールを装着した程度だ。一方、LEDヘッドランプとテールランプのグラフィックはキアのものをほぼそのまま受け継ぎ、内装も3列7人乗りの構成と全体的なレイアウトがベース車とほぼ同じだ。ただし、ステアリングホイールにはヒョンデ独自の4つの点で構成されたエンブレムを配し、シートを黒で仕上げて最低限の差別化を図った。
性能と価格、どこまで受け継いだのか
性能諸元も、ベース車であるキア・カレンス・クラビスEVを基準に推し量ることができる。標準モデルは42kWhバッテリーと最高出力133馬力(99kW・135PS)の組み合わせで、上位グレードは51.4kWhバッテリーと最高出力169馬力(126kW・171PS)を組み合わせる。1回の充電での最大航続距離は約490kmだ。

室内には12.3インチのデジタルディスプレイを2枚横並びに配置し、近年の電気自動車らしい雰囲気を演出した。ベース車のキア・カレンス・クラビスEVは、インドで128万5,000ルピー(約212万9,000円)から販売されている。市場によっては、1.5リットルのガソリンまたはディーゼルエンジンを搭載する非電動モデルも展開される。ネイラのインドネシアでの販売価格はまだ公表されておらず、発売時期が近づけば発表される予定だ。
ブランドだけを変えた戦略、狙いは何か?

ヒョンデがあえて新車を一から開発せず、キアのモデルを借りた背景には明確な狙いがある。すでに実績のある兄弟ブランドのプラットフォームと技術を活用すれば、開発費と時間を大幅に節約しながら、低価格の3列シート電気ミニバンを求める新興市場の需要に素早く対応できるためだ。
同じグループ内で行われるこうしたバッジエンジニアリングは、消費者にはややなじみが薄く感じられる可能性がある。しかし、メーカーにとっては、限られた資源でラインアップを拡大する現実的な方法でもある。ヒョンデがネイラを前面に出し、東南アジアの電気ミニバン市場でどのような成果を上げるのか、また正式発売時にどのような価格を設定するのかが注目される。