
自動車は機械であるため、使い続けていればいつかは故障する。普段からどれほど丁寧に管理してきた車でも、一つ一つの部品は結局消耗品であり、時間がたてばどこかに不具合が生じるものだ。車が故障した際、エンジンがかかり動かせる状態なら、自分で運転して整備工場まで行きたくなるものだが、公道を走るためには守るべきルールがある。やむを得ない事情とはいえ、実際にはどの程度の故障までなら公道走行が認められるのだろうか。
結論から言えば、公道を走るには保安基準に適合していることが条件となる。保安基準に適合している、つまり車検に通る状態であることが、公道を走るための条件というわけだ。言い換えれば、動くからといって無条件に走ってよいわけではなく、この基準を満たしているかどうかが重要となる。
まず、灯火類に異常がある車は走行できない。ライトのレンズが割れていたり、光軸がずれていたり、方向指示器が点灯しなかったり、ブレーキランプやテールランプが点灯しなかったりする状態は、いずれも認められない。片側のランプしか点灯しない場合も当然だめだ。灯火類は自分の視界を確保するだけでなく、他の車に自車の存在や動きを知らせる装置でもあるため、少しでも異常があれば例外なく整備不良とみなされる。
サイドミラーが破損している場合も整備不良となり、オイルが滴るほど漏れている状態も走行できない。フロントガラスに飛び石などによる傷がある場合も認められず、警音器が鳴らない状態もだめだ。タイヤに損傷があったり、スリップサインが出ていたりする場合も走行できない。空気圧の不良さえ整備不良となるため注意が必要だ。一見すると些細に思える項目まで細かく基準に含まれており、普段考えている以上に厳しい基準が適用されていることが分かる。
事故などで外装部品が破損することもあるが、バンパーやボディーを擦った程度や、少しへこんだ程度であればひとまず問題ない。ただし、大きく変形していたり、脱落する恐れがあったりする場合は認められない。道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第100条(車枠及び車体)には、次のように定められている。
第一に、車枠及び車体は堅ろうで、運行に十分耐えられるものでなければならない。第二に、車体は車枠に確実に取り付けられ、振動や衝撃などによって緩まないものでなければならない。第三に、車枠及び車体は著しく損傷していてはならない。これらの条件を満たしていない車両は、公道の走行が認められない。つまり、単に見た目が悪いかどうかではなく、走行中に部品が脱落したり、車体構造そのものが不安定になったりする危険があるかどうかが判断基準となる。このほか、まっすぐ走らない場合や、メーターパネル内の警告灯が点灯した状態で走行する場合、マフラーが外れていたり排気ガスが漏れていたりする車両も走行できない。
自分で運転して整備工場まで行ける程度の故障は、エアコンが作動しない、パワーウインドーが動かない、オーディオから音が出ない、異音がするといった程度までだ。こうした症状には、運転者本人の快適性や利便性に影響するだけで、他の車両や歩行者の安全を直接脅かすものではないという共通点がある。本人が我慢すれば済み、他人には影響しない範囲の故障を除き、走行に影響する可能性がある故障なら、基本的にはJAFや自動車保険の特約などのロードサービスを利用して整備工場まで運ぶようにしたい。無理に自分で運転して二次事故につながるよりも、多少手間がかかっても安全な方法を選ぶ方が、結果的に時間と費用の両方を節約することにつながる。