「国民は給油制限、首脳は防弾リムジン」プーチンのロシアに広がる皮肉な対比

アウルス・セナート 引用:クレムリン/レディット
引用:クレムリン/レディット

戦争にこだわるロシアのプーチン大統領のせいで、ロシアの庶民が給油所の前に並ぶ時代が来た。ウクライナ戦争が5年目に突入した2026年現在、ロシア全土でガソリン価格が高騰し、相当数の地域では車1台あたり20〜30リットルの販売制限が実施される燃料配給まで行われている。

こうした状況の中で改めて注目を集めているのが、製作費124億ルーブル(約260億円)が投じられたウラジーミル・プーチン大統領の専用リムジン、「ロシア版ロールス・ロイス」ことアウルス・セナートである。国民は燃料を配給されるのに、首脳は850馬力の防弾リムジンに乗るという対比が再び話題になっている。

プーチンのロシア、燃料難に揺れる

プーチンが直面している状況は、様々な側面で危機的だ。ウクライナ軍の石油精製施設と燃料基地への攻撃が続き、ロシアのガソリン生産は2025年6月に比べて約25%急減し、全国的な燃料不足が発生している。

引用:クレムリン
引用:クレムリン

経済も深刻だ。ロシアは記録的な財政赤字に直面し、付加価値税を20%から22%に引き上げた。経済成長率が1%前後にとどまる一方、物価上昇率は5〜9%に達している。

戦争の長期化と経済難、税金の引き上げが重なり、プーチン体制に対するロシア国内の疲労感と不満が高まっているとの分析も出ている。それでもプーチンはウクライナと西側が提案した休戦案を拒否し、戦争を続けている。

アウルス・セナートリムジン、製作費は124億ルーブルに上る

こうしたロシアの現実と明確に対比されるのがプーチンの専用車だ。セナートリムジンは、プーチンが就任後、アメリカ大統領の儀典車両「キャデラック・ワン」に対抗するためにアウルスに依頼して誕生したリムジンだ。アウルスはロシア初の高級自動車ブランドで、金の元素記号「Au」とロシア(Rus)を組み合わせた名前だ。

引用:クレムリン
引用:クレムリン

車両設計はモスクワの中央自動車エンジン科学研究所(NAMI)が担当し、「コルテージ計画」のもとロシア製部品で製造された。各種防弾素材のため重量は7,200kg、車両の長さは7,010mmに達する。プーチンが2018年の就任式で初めて使用した後、セナートリムジンを含むアウルス車両はロシア大統領専用車および国賓儀典車両として使用されている。

セナートリムジンが世界に名を知らしめたきっかけは、2023年9月13日アムール州ボストーチヌイ宇宙基地で行われた露朝首脳会談だ。当時プーチンはマイバッハリムジンに乗って到着した金正恩国務委員長にセナートリムジンを直接紹介し、金正恩がその車両に座ってみる場面は予定外の出来事として紹介され、大きな話題を呼んだ。

極限の脅威にも耐える防御性能を備える

セナートリムジンの警護仕様は想像を超える。爆弾や化学兵器攻撃に耐えられ、車両が水に完全に沈んでも生存可能なレベルの安全性を備えているとされる。穴が開いても長期間走行可能なタイヤ、6cmの厚さの強化ガラス、夜間視力カメラ、ガス攻撃を防ぐ空気圧縮システム、装甲コーティング、脱出用非常口まで備えている。

引用:クレムリン
引用:クレムリン

また避けられない衝突に直面すると、助手席シートが自動的に安全な位置に移動し、全座席のシートベルトを締めながらドアと窓を閉じる。内部通信システムはロシアの人工衛星と接続されており、どんな状況でも通信が可能だ。

詳細なスペックは公開されていないが、850馬力のV12ツインターボエンジンと9速オートマチックトランスミッションが搭載されていると推測される。室内は白い革シートと木製装飾、デジタルメーターとマルチメディアシステムで飾られ、ハンドルにはロシアの国章が、ドア側にはロシア大統領の紋章が刻まれている。

引用:アウルス
引用:アウルス

大衆モデルも存在したが、現在は生産を中止している

セナートは一般消費者向けモデルも存在する。2019年ジュネーブ国際モーターショーで公開された大衆販売用セナートは、ホウ素を多量に含む素材で車体を製作し、ねじれや曲がりに強く、サイズに対して軽量だと紹介された。パワートレインは最高出力590馬力、最大トルク89.8kg.mを発揮するハイブリッドV8エンジンだ。

もちろん現在はロシアのウクライナ侵攻の影響で生産が中止されている。燃料配給の列に並ぶ市民たちとクレムリンの防弾リムジン。アウルス・セナートを取り巻くこの対比は、戦争5年目のロシアの現状を端的に表している。

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