
BYDのフラッグシップSUV「仰望(ヤンワン)U8L」が従来の鋼製フレームに代えてアルミフレームを採用し、話題となっている。BYDはこのフレームに、航空宇宙分野の製造技術から着想を得た特殊合金と製造プロセスを適用したと説明する。剛性を示すデモとして、フレーム単体で12トンのバスを持ち上げる実演も披露された。
BYDのデモンストレーションが示す技術力
BYDは技術力を示す印象的なデモを積極的に行ってきたブランドである。とりわけハイエンド電動ブランド「仰望(ヤンワン)」はこれまで様々なプロモーションイベントで話題を呼んできた。仰望U8はその場での360度回転や水上走行機能、高い車体剛性などを積極的にアピールし、仰望U9スポーツカーはエアサスペンションを活用して障害物を飛び越えたり、車体を躍動させる映像で注目を集めた。
今回は、ロングホイールベース仕様の仰望U8Lに採用されたアルミフレームが焦点となっている。U8Lは標準型U8に対してホイールベースと車体全長を延長したモデルで、室内には3列シートを採用し、最大6人が乗車できる。外観上の大きな変化はないものの、車体下部の構造は標準型U8から大幅に見直されている。

アルミフレームが選ばれた理由と設計思想
一般的にフレームボディSUVやピックアップトラックは鋼製フレームを用いる。鋼鉄は強度と耐久性に優れ、悪路走行時にフレームがある程度のたわみを生じることで路面からの衝撃を吸収しやすいという特性を持つ。各輪の接地性を維持する点でも有利とも言われる。
しかしBYDはU8Lに、新方式の高剛性鋳造アルミフレームを採用した。BYDによれば、このフレームは航空宇宙分野の製造技術から着想を得て開発されており、航空宇宙部品サプライヤーのハンテックと共同開発されたとしている。
BYDはこれを「一体型アルミ車両フレーム」と説明しているが、公開された映像を見ると、単一の通し構造というよりも複数のアルミ部品をボルトとリベットで締結した構成に近い。アルミニウムは溶接時の高熱により素材特性が変化しやすいため、接合方法にも独自の技術的配慮が求められる素材である。

性能検証と今後の課題
BYDによればU8Lのアルミフレームは従来の鋼製フレームより55kg軽く、ねじれ剛性は同クラス車両を50%以上上回るとしている。ねじれ剛性とは、車体がねじれ変形に対してどれだけ抵抗するかを表す指標だ。一般的にこの数値が高いほど走行安定性、乗り心地、静粛性の向上に有利とされる。
この性能を示すため、BYDはフレーム単体で12トンのバスを持ち上げる実演を行った。フレーム剛性を視覚的に訴えるためのものだ。
ただし、剛性が高いからといってあらゆる走行環境で無条件に有利なわけではない。とりわけ仰望U8Lのような大型・重量級のSUVは、オフロード走行中に絶えず路面変化への対応を求められる。その過程でフレームは繰り返しのねじれ荷重と衝撃にさらされ続ける。

フレームの剛性が過度に高い場合、衝撃や応力が特定の部位に集中しやすくなる。長期にわたってこうした負荷が繰り返されると金属疲労が蓄積し、亀裂や破損につながりうるとの指摘もある。逆に従来の鋼製フレームは一定の柔軟性を持つよう設計できるため、過酷なオフロード環境では耐久性の面で利点を示すことがある。
仰望U8Lのアルミフレームが長期耐久性やオフロード性能の面で実際にどのような結果を示すかは、時間をかけて検証されることになる。一方で、BYDが従来のフレームボディSUVにおける一般的な設計思想とは異なるアプローチを試みていることは間違いない。