
テスラとBYDという世界をリードする電気自動車メーカーが、日本市場で前例のない攻防を繰り広げている。日経新聞によれば、テスラは現在23店舗の直営拠点を年内に30店舗、来年末までに50店舗に拡大する計画を打ち出し、将来的には100店舗を目指す意向を示した。
加えて、国内に約130か所ある急速充電スポットを大幅に増設し、独自のアダプターで日本規格にも対応する徹底ぶりだ。この戦略は、オンライン販売に偏重してきた従来のイメージを一変させ、テスラが「顧客接点のリアル拡大」を強く意識していることを物語っている。
今年上半期の国内販売は前年同期比約70%増の4,600台に達し、輸入車市場での存在感を急速に高めた。2027年にはベンツの輸入車トップの座を虎視眈々と狙うとの観測も流れており、テスラの日本市場への本格参戦は一段と加速しそうだ。

一方、中国のBYDは先月時点で63店舗を構え、年内に100店舗体制へシフトすると発表した。さらに、来年後半には軽自動車分野にもEVを投入し、日本メーカーが長年守ってきた「国内心臓部」に切り込む構えを明らかにした。
しかし、日本全体のEV普及率は依然低迷しており、2023年の電気自動車販売は前年比7%減の約2.7万台、シェアは12.6%にとどまっている。トヨタやホンダ、日産の次世代EVが来秋以降にようやく発売される見込みで、国内勢が巻き返しを図る余地は大きい。
政府は2030年までに乗用車販売の20~30%をEV・PHEVに引き上げる目標を掲げ、インフラ整備や補助金を拡充中だ。特に高速道路上の急速充電器は2025年に1,000基へ増設する計画で、EV市場の裾野が今後急拡大する可能性が高い。
熾烈な店舗戦略と充電網拡充を背景に、テスラとBYDという異なるビジネスモデルが火花を散らす日本EV市場。家電感覚のオンライン販売だけでは獲得できない顧客を、両社がリアル拠点を駆使していかに取り込むかが、今後の勝敗を分けるカギとなるだろう。