
SUVやピックアップトラックを中心とした車両の大型化が過去20年にわたって続くなか、高くなったボンネット(フード)が歩行者事故のリスクを高めているとする研究結果が発表された。ボンネットの高さが増すほど、衝突時に歩行者が重篤な傷害を負う可能性が高まるとされており、この傾向によって数千人規模の追加死亡が生じた可能性があるとの分析だ。
ニューヨーク・タイムズは、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の衝突データや死亡事故分析報告システム(FARS)、車両サイズデータ、自動車登録情報を総合的に分析した結果、このような結論が得られたと報じた。
研究チームは2016年から2024年にかけてのNHTSAの衝突データおよびFARS、車両測定データ、ならびに2002年から2024年にかけての車両登録データを活用。飲酒の有無、事故発生年、車両年式、ドライバーと歩行者の年齢・性別など複数の変数を加味したうえで、車両サイズと歩行者死亡リスクの相関を分析した。

ボンネット高さと歩行者死亡リスクの相関データ
その結果、車両のボンネットが約2.5cm高くなるごとに、衝突時に歩行者が死亡するリスクが約2.8%上昇することが示された。
同チームは2016年から2024年にかけてのボンネット高さの上昇により、約3,000人の歩行者が追加で死亡した可能性があると推定した。また、車両サイズが2000年代初頭の水準にとどまっていれば、毎年200〜400人の死亡を防ぐことができたとも分析している。
研究チームは、歩行者事故リスク増大の主な要因として、大型SUVとピックアップトラックの普及を指摘した。

なぜ高いボンネットは歩行者に危険なのか
ボンネットが高くなると、衝突時の衝撃が歩行者の重心より上方に加わりやすくなる。その結果、歩行者がボンネット上に乗り上げるのではなく、車体前部に直撃されたあと路面に叩きつけられ、より重篤な傷害を負うリスクが高まるとしている。
もう一つの問題は、車両前面とAピラーの拡大による前方視野の縮小だ。大型車両では横転時の乗員保護を目的とした車体構造の強化が進んだが、その結果として車両周辺の死角が広がったと分析されている。
また同チームは、最新型ピックアップトラックと旧型モデルの3次元スキャンによる比較も実施した。最新型のシボレー シルバラード1500では旧型に比べて前方死角が大幅に拡大していることが判明。GMCシエラとトヨタ タコマでも同様に死角の拡大が確認された一方、フォード F-150は増加幅が相対的に小さかった。

業界が直面する歩行者安全対策の課題
これまで自動車業界は、衝突時の乗員保護性能の向上に注力してきた。車体剛性や安全装置の改善により車内乗員の生存率は向上した一方、歩行者の安全対策が相対的に後手に回ってきたとの指摘もある。
SUVとピックアップトラック中心という市場の流れが続くなか、車両サイズの縮小ではなく、衝突被害軽減技術と歩行者保護設計の改善によって安全性を高めるべきだという意見が出ている。