「欧州には入れない」米国製ピックアップに突きつけられた壁、貿易協定にも火の粉が飛んだ

引用:フォード
引用:フォード

EU車両認証厳格化で米国製ピックアップが市場締め出し危機、米欧貿易摩擦が激化

EU(欧州連合)が安全および環境規制を強化する動きを見せていることで、米国の自動車業界との対立が深まっている。論争の焦点は、2027年から大幅に厳格化される予定の「個別車両認可(Individual Vehicle Approval:IVA)」制度だ。これまでフォード・F-150やシボレー・シルバラードといった米国を代表する大型ピックアップトラックは、比較的要件が緩和されたIVAを利用して欧州市場に進出してきた。しかし、今回の制度改正により、この「逃げ道」とも言える経路が事実上遮断される危機に直面している。

米国製大型車の欧州市場参入を支えてきたIVA制度

実際、2025年に欧州で販売された米国製SUVとピックアップトラック約7,000台のうち、相当数がこの制度を通じて登録された。特にステランティス傘下の「ラム(RAM)」ブランドが5,200台以上を販売するなど、大型車への一定の需要が存在するなか、米国自動車政策評議会(AAPC)は「新しい規則は事実上の輸入禁止に等しい」と強く反発している。

貿易協定発効への不確実性と関税対立の再燃

今回の規制を巡る対立は、現在批准待ちの状態にある「米・EU貿易協定」の先行きにも暗い影を落としている。この協定には、EUによる米国車への関税(10%)撤廃や、米国による欧州車への関税引き下げなど、画期的な内容が含まれている。しかし、アンドルー・パズダー駐EU米国大使は、「安全基準の厳格化が米国車の市場アクセスを制限するならば、貿易協定そのものが危うくなる」と直接的な警告を発した。

「技術的貿易障壁」を巡る主張の対立

米国側は、今回の規制強化を「安全を名目にした高度な技術的貿易障壁(TBT)」だと主張。一方、欧州委員会は「現行の規則は欧州の安全基準に適合しない車両の流入を不当に許容している」とし、制度改正の妥当性を強調している。双方の主張は平行線をたどり、関税撤廃を通じた市場拡大計画には暗雲が垂れ込めている。

環境・安全問題と保護主義的側面の衝突

欧州の環境団体「Transport & Environment(T&E)」は、大型ピックアップトラックの増加が、歩行者や自転車利用者といった「交通弱者(VRU)」に深刻な安全リスクをもたらすと批判。巨大な車体が道路安全を脅かすだけでなく、欧州の厳しい環境基準(Euro 7等)を満たすことが困難である点も、規制強化の主要な根拠とされている。欧州当局も、環境保護と道路安全の観点から、例外的な輸入経路を狭めるべきだという立場を鮮明にしている。

報復関税の可能性も、米欧自動車摩擦は当面ピークへ

結局、今回の対立は単なる技術基準の相違を超え、自国産業の保護的側面と環境政策が複雑に絡み合う貿易摩擦へと発展している。米国製ピックアップの欧州輸出が阻害された場合、米国政府による報復関税を含む対抗措置の可能性も排除できず、自動車業界を巡る両経済圏の緊張は当面、ピークに達することが予想される。

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