
中国の電気自動車(EV)と新興国ブランドの攻勢が、世界の自動車市場の競争構図を揺るがしている。価格競争力と長い航続距離、現地生産網の確保を前面に出した中国企業がヨーロッパとアジア市場に進出するなか、日本の完成車業界の危機感も高まっている。
◆中国EV攻勢と新興国の台頭
中国の上海に生産拠点を持つテスラの供給量増加が市場に影響を与えているが、中国ブランド自体の躍進も目立つ。アメリカと欧州連合(EU)、日本は中国製EVに対して関税や補助金の差別支給などで対応している。アメリカは中国製EVに100%の関税を課し、EUも最高45.3%の関税障壁を設けた。日本は自国のEVとテスラの一部車種には補助金を多く支給しているが、BYD車両には低い補助金を設定している。
中国企業は関税障壁を回避するために、ヨーロッパ内の生産拠点確保にも加速をかけている。フォルクスワーゲンが2025年末にドイツ・ドレスデン工場の閉鎖を決定した際、中国のEV企業が買収候補に挙がった。BYDがフォルクスワーゲン工場の買収を協議中という報道があり、吉利汽車とシャオペン(XPENG)もヨーロッパ工場の活用を検討しているとされている。零跑汽車と紅旗もステランティスのスペイン工場を活用する方針を進めている。
中国が世界市場向けに推し進める新たな輸出の軸がプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。BYDは2026年にヨーロッパと東南アジアで発売を進めている中型セダン「シール05 DM-i」について、バッテリーとガソリンをともに満充電・満タンにした状態で最大2,000kmの航続が可能と明らかにした。中国汽車工業協会によると、2026年4月に中国はEVとPHEVなどの環境車43万台を輸出した。全体の自動車輸出も90万台を超え、過去最高を更新した。PHEVの輸出量は17万台で、前年同期比1.8倍に増加した。
新興国も電動化の転換期を産業の飛躍の機会と捉えている。ベトナム最大の企業ビングループが創設したビンファストは、2025年にベトナム国内で17万5,099台を販売し、自動車販売台数を大幅に伸ばした。トルコのトッグは政府の支援を背景に2030年までに自国産EV200万台の普及を目指しており、2023年以降、トルコ国内のEV販売で首位を記録している。マレーシアと中国の吉利の合弁ブランド、プロトンもEVを発売し、市場シェアを伸ばした。
◆苦境に立つ日本の完成車業界
中国のEVと新興国ブランドが電動化の転換期を足場に世界市場に進出するなか、かつてグローバル自動車市場を主導した日本の完成車業界は明らかな下落傾向を示している。1962年の上場以来初の赤字を記録したホンダは、一部市場からの撤退を決定した。
世界販売量における日本車の比率は2019年の31%から2025年には26%に落ちた。東南アジアのシェアは2024年の68%から2025年には57%に低下した。日本の自動車業界の苦境は、EVモデルの不足だけでは説明できない。自動車競争の中心がエンジンと変速機から、バッテリー、ソフトウェア、車両運用システム、電動化プラットフォームへと移行するなか、従来の製造面での強みが以前ほどの競争優位を発揮しにくくなっているためだ。日本企業は電動化とソフトウェア中心の車両転換において対応が遅れているとの見方が出ている。
EV競争の構造変化と日本市場への影響
EV時代の競争は完成車メーカーだけの戦いではなく、バッテリーとソフトウェア、生産拠点をめぐる「国家代理戦争」の様相を呈しているとの見方もある。