
旅行シーズンの観光バスや高速バスで多くの人を悩ませるのがバス酔いだ。医学的には「動揺病」と呼ばれる自律神経の失調状態で、人は内耳の三半規管と耳石器で揺れや傾きを感じ取り、視覚情報と体性感覚を脳で統合して姿勢を保っている。バスの不規則な揺れや加減速、急カーブにさらされると、目に映る景色と耳が感じる揺れにずれが生じ、脳が混乱して吐き気やめまいなどの症状が現れる。

バスは乗用車より車体が大きく視点も高いうえ、細かな振動やにおいが車内にこもりやすく、症状が重くなりやすい。同じバスでも平気な人がいるのは、三半規管の感度に加え、乗り物への慣れが大きいためだ。自分で運転する人や乗車経験の豊富な人は、次の動きを脳が予測・学習しており酔いにくい。睡眠不足や胃腸の疲れ、「自分は酔いやすい」という予期不安も自律神経を乱す要因になる。

乗り物酔いは乗車前の準備と座席選びだけでも大きく軽減できる。前日は十分な睡眠を取り、食事は腹七分目程度にとどめたい。酔い止め薬は乗車30分前の服用が効果的で、「飲んだから大丈夫」という安心感も大きい。最も揺れが少ないのは前輪と後輪の間の車体中央付近で、後輪の真上や最後列、タイヤハウスの上付近は揺れや熱、振動が伝わりやすいため避けた方がよい。

乗車後は脳の混乱を防ぐ行動が重要になる。スマートフォンや本を見ると、視覚と体の感覚の食い違いが最大になるため避けたい。視線は進行方向の遠くへ向け、カーブの手前で次の動きを目で捉えておくと、脳の予測を助けられる。音楽や会話で意識を分散させ、ベルトを緩めて呼吸を楽にするのも有効だ。仕組みを理解して対策を取れば、ある程度は自分でコントロールできる。