
トランプ米大統領がラスベガスでの演説で、EVドライバーの「航続距離不安」を「病気」と表現し、大きな波紋を呼んだ。充電を心配するドライバーを「正気ではない」とも述べ、自身が「EV義務化政策を終わらせた」とする従来の主張も改めて繰り返した。自動車産業の行方を左右し得る発言だけに、EV支持派と懐疑派の間で論争が再燃している。

トランプ氏は、その義務化が2030年ごろまでという「非常に短い期間で」全国民にEVの保有を求める内容だったと説明した。しかし米国には、国民にEV購入を直接強制する連邦規則は存在しなかった。バイデン前政権の政策も、排出ガス規制を通じてメーカーに圧力をかける方式で、目標は2030年までに新車販売の50%をゼロエミッション車にすることだった。

市場認識にも差がある。トランプ氏はEVが新車販売の7%を占めると述べたが、Kelley Blue Bookの推計では第2四半期(4〜6月)のEVシェアは5.8%程度にとどまる。一方、米エネルギー省によると全米の公共充電ポートは25万口を超え、充電環境は着実に改善している。連邦のEV税額控除は1台当たり7,500ドル(約118万7,000円)規模だった。

EVが万能というわけではなく、長距離移動が多い場合や充電環境が乏しい地域では、航続距離への懸念は今も妥当だ。ただし専門家は、自宅充電が可能な環境であれば日常走行の不安の多くは解消できるとみる。今回の論争は、EVへの認識が政治的立場でいかに分かれるかを映す事例であり、感情的な言辞を離れデータを冷静に見る姿勢が求められる。