
東南アジア最大の自動車製造拠点であるタイで、長年続いてきた日本車ブランドの圧倒的なシェアが揺らぎを見せている。
スズキがタイの生産工場を米フォード・モーターに売却し、現地生産からの撤退を決定した。中国の電気自動車(EV)メーカーの攻勢が強まる中、日本車メーカーの牙城とされてきた同国市場で大きな変化が起きている。
26日、現地メディアなどの報道によると、スズキはタイ・ラヨーン県にある四輪車組立工場をフォードに売却することで合意した。2012年に操業を開始した同工場は年間8万台の生産能力を持ち、コンパクトカーの「スイフト」などを生産してきた。しかし、近年の販売不振により稼働率が急落し、最終的に売却に至った。
スズキの工場売却は、タイにおける日本車ブランドの苦境を象徴している。2020年まで日本車のタイ市場シェアは約90%に達していたが、近年の中国ブランドの躍進により70%を割り込んでいる。
フォードは、自社工場に隣接するスズキの用地(約66ヘクタール)を取得することで、東南アジア市場の主力モデルであるピックアップトラック「レンジャー」やSUV「エベレスト」の生産体制を拡充する見通しだ。フォードのタイにおける累計投資額は39億ドル(約1,330億バーツ)に達しており、関係者は「タイを東南アジアおよびグローバル輸出の拠点とする長期戦略の一環だ」と強調している。
かつて年間約6万台を生産していたスズキのタイ生産量は、2024年には4,400台まで落ち込んでいた。これは設計能力のわずか5%程度に過ぎない。スズキは2025年末までにタイでの四輪車生産を完全に停止し、経営資源をインドなどの主力拠点に集中させる方針だ。
タイ市場の変化は数字に如実に表れている。2025年1月から11月までの中国ブランドの市場シェアは21%に急増した。これはわずか3年前の2022年と比較して約4倍の成長である。BYDをはじめとする中国のEVメーカーは、政府の補助金支援と価格競争力を武器に、急速に市場を浸食している。
スズキ以外にも、日本車メーカーの事業縮小が相次いでいる。ホンダは国内2工場の集約による減産を決め、日産自動車は一部ラインの稼働を停止した。三菱自動車も一部工場の操業を一時中断する予定だ。
業界関係者は「日本車ブランドがハイブリッド車(HEV)やEVへの転換に時間を要する中、中国メーカーがその隙を突いた」と分析する。タイの自動車市場は、かつての日本勢による独占状態から、日・米・中が激しく競り合う新たな局面へと移行している。