
日産自動車は6月30日、最新の第3世代e-POWERハイブリッドパワートレインを今年の欧州市場から順次投入すると発表した。今回公開された次世代e-POWERシステムは、エネルギー効率、排出ガス削減、そして静粛性の向上を大きな特徴としている。
日産によれば、この新システムは内燃機関車からゼロエミッションの電動車両へ、より自然に移行できるよう設計されたという。中でも、5つのコンポーネント(電気モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機)を一体化した「5-in-1モジュール」は、小型・軽量化を実現した技術的な核心となっている。
■ 電気モーター駆動、エンジンは発電専用
第3世代e-POWERでは、新開発の1.5リッター3気筒ターボエンジンを搭載している。このエンジンは車輪を直接駆動せず、あくまで発電専用の役割を果たす構成だ。発電された電力は高効率の電動モーターで直接走行に使用されるか、バッテリーに蓄電されて後の走行に活用される。
この構成により、電動車ならではの滑らかでレスポンスに優れた走行感を維持しながら、ハイブリッド車特有の燃費効率と長距離走行性能も両立できるとされている。
■ 効率性と環境性能を向上
新e-POWERシステムは、まず2024年9月に欧州市場で発売される新型キャシュカイ(Qashqai)に搭載される予定だ。WLTP基準による燃費は100kmあたり4.5リットルを記録し、満タンで最大1,200kmの走行が可能とされている。
また、CO2排出量は従来の116g/kmから102g/kmへと12%以上削減され、環境性能も大きく改善された。さらに、車内の騒音レベルは平均で5.6dB低下し、静粛性の面でも着実な進化を遂げている。これにより、市街地や渋滞中の快適性向上も期待される。
■ グローバル車種への展開予定
日産は今後、この次世代e-POWERシステムを北米向けの2026年型ローグ(Rogue)SUVや、日本市場向けの第4世代エルグランド(Elgrand)などにも展開する計画を明らかにしている。ローグは北米で展開されている中型SUVであり、大型ミニバンのエルグランドとともに、e-POWERによって燃費や静粛性の向上が見込まれている。
この新型パワートレインの導入は、日産の掲げる「電動化加速戦略」の中核を成すものだ。内燃機関とEVの橋渡しとなるハイブリッド技術をさらに進化させることで、環境対応と実用性を兼ね備えた移行期モデルとしての存在感を高めていく構えだ。