トヨタのミニバン「シエナ」にリコール措置
ファミリーカーの定番モデルに安全性の懸念
構造的欠陥による深刻なリコールか

トヨタのミニバン「シエナ」は、広々とした室内とハイブリッドパワートレインを武器に、長年にわたってファミリーカーの定番として支持を集めてきた。2WDとAWDの両方を選べる点も大きな魅力だ。しかし、そのシエナが安全性をめぐる問題で注目を集めている。リコールの原因とされたのは、3列目シートの固定に関する不具合。ファミリーユースが前提のミニバンにとって致命的とも言える問題だ。
この不具合は、単なる機能的なトラブルにとどまらない。衝突時に3列目の乗員が危険にさらされる可能性があるとされ、とりわけ子どもが座るケースが多いこの座席での問題という点で、不安の声が広がっている。今回のリコールについて、詳しく見ていく。


シエナ・ハイブリッドにリコール
問われる品質管理体制
韓国トヨタ自動車は2024年12月から2025年1月に生産された「シエナ・ハイブリッド」の一部モデルについて、自主的なリコールを実施すると発表した。対象は2WDおよびAWDモデルの計21台。問題となったのは、3列目シートのバックレストを固定するボルトの締め付けが不十分だった点だ。
原因は製造工程での品質管理の不徹底とされており、この欠陥により米国連邦自動車安全基準(FMVSS)202、207、225を満たしていないことが判明した。リコール対応では、対象車両のボルトを規定トルクで再締結する処置が取られる。この修正は作業自体はシンプルだが、製品出荷前に見過ごされていたという事実が、品質への疑念を呼び起こしている。たとえ軽微な修正で済むとしても、信頼性に定評のあるブランドだけに、その影響は小さくない。

信頼を揺るがす安全性の問題
構造的欠陥が信頼に与える影響
今回の不具合は3列目に座ることが多い子どもの安全を直接的に脅かすものであるだけに、ミニバン購入層にとって深刻な問題となっている。チャイルドシートを正しく装着していても、座席そのものが衝撃に耐えられなければ、保護の意味を成さない。長年にわたって築かれてきた「トヨタ=安心・安全」というブランドイメージが、こうした構造的な欠陥によって揺らぎかねない。今回のリコールは件数としては限定的だが、品質に厳しい目を持つユーザー層には十分なインパクトを与えた。
シエナは今なお輸入ミニバン市場で存在感を放っているが、家族の安全を預かる車である以上、信頼を損なうリスクは極めて大きい。トヨタは迅速なリコール対応を進めているものの、根本的に求められるのは、問題を未然に防ぐ体制の再構築だ。求められるのは、安心して家族を乗せられるという信頼性であり、それを確保できなければブランド価値そのものに影響を及ぼすことになる。今回の事例はトヨタが品質管理の原点に立ち返る契機とすべき出来事と言えるだろう。