「テスラ・モデル3に衝撃判決」ドイツ裁判所、ファントムブレーキ問題を『欠陥』と認定

テスラ・モデル3のファントムブレーキ

ドイツ裁判所で「欠陥」と認定

続発するFSD関連事故に波紋

引用:Reddit

半自動運転オプションを選択したテスラ車オーナーなら誰しも一度は経験したことがあるだろう現象がある。先行車両との距離が十分にあっても衝突警報が鳴ったり、前方に障害物がないのに急ブレーキがかかったりする現象だ。この現象は「ゴーストブレーキ」や「ファントムブレーキ」と呼ばれ、最近、ドイツの裁判所で予想外の判決が下され、話題になっている。自動運転の先駆者とされるテスラが対象となった裁判だ。

ドイツ在住のテスラ・モデル3オーナー、クリストフ・リンドナー氏は運転中に頻発するファントムブレーキの症状に悩まされ、テスラに対して訴訟を起こした。リンドナー氏によるとトンネルの出入り口や路面状況の変化など、理不尽な状況でファントムブレーキが発生したという。テスラのFSD(完全自動運転)関連事故が相次ぐ中、この訴訟は注目に値する事件となった。

引用:YouTube「Kevin Gautier」
引用:YouTube「Wham Baam Teslacam」

専門エンジニアの試運転中

危険な状況が発生

この訴訟の過程でドイツの裁判官はリンドナー氏のモデル3を実際に運転し、問題の症状を確認するよう命じた。これを受けてエンジニアは当該車両を700km以上走行させ、車内に2台のカメラを設置して高速道路での走行テストを実施。しかし、試験走行中もファントムブレーキ症状が続発し、安全上の理由から実験は中止せざるを得なくなった。

エンジニアの運転中に発生した事例として、モデル3を時速140kmで高速道路を走行中、突如として理由もなくブレーキがかかり、時速96kmまで減速した。この結果、後続車両は急ブレーキを強いられ、回避行動を取らざるを得ない状況となった。時速90km以上での走行中にこうした事態が起きるのは極めて危険で、後続車両が前方不注意だった場合、追突事故のリスクが高い。

引用:GreenCars
引用:Edmunds

ドイツ裁判所の判断は「欠陥あり」

消費者は「交換または返金」を要求

この事例を踏まえ、ドイツの裁判所は当該車両に「欠陥がある」と判断。テスラのオートパイロットシステムについて「価格に見合った機能を提供していない」と指摘した。これに先立ち、テスラはオートパイロットシステムが設計通りに機能していると主張していたが、裁判所は原告の車両修理を命じていた。これに対し、車主は新車との交換か返金を求めている。

自動運転技術を搭載した車両の量産が始まってから数年が経つが、まだ完成段階には至っておらず、世界各国で法整備も不十分な状況だ。そのため、ファントムブレーキなどの症状を「欠陥」と認定した事例はこれまでなかった。このような判断が下されたことで、テスラオーナーは注目せざるを得ない状況だ。

引用:Teslarati
引用:Electrek

2022年のアップデートにも関わらず

世界中で抗議が続く

テスラは2022年にFSDの10.11アップデートを実施し、ファントムブレーキ問題を解決したと発表していた。発表によれば、VRU(Vulnerable Road Users)ソフトウェアロジックを修正し、検知精度が向上したことで誤作動が減少したという。しかし、テスラのこの主張は実際の消費者の体験とはかけ離れているようだ。現在も世界中のテスラオーナーがこの問題に悩まされている。

2023年には別のモデル3オーナーが訴訟を起こしたことからも問題の深刻さがうかがえる。類似の問題が米国高速道路交通安全局(NHTSA)にも多数報告されており、最近もFSD関連の交通事故が各国で発生している。テスラへの批判が高まる中、SDV(自動運転車)代表のテスラ車両を運用する際は、特別な注意が求められるだろう。

あわせて読みたい

関連キーワード

コメントを残す

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

こんなコンテンツもおすすめです

Depositphotos_665949402_S
走り方ひとつで燃費30%差、EVモードの“本当の使い方”
CP-2023-0065-33426688-thumb
マツダ、技術は完成しても“復活のゴーサイン”出ず…ICONIC SPを止めた現実
CP-2023-0065-33386577-thumb
「消えないピストンの鼓動」トヨタ、新V8で電動時代に反撃
CP-2023-0065-33465639-thumb
「数円節約の代償はAT崩壊」N変速の落とし穴、故障データが示す深刻さ
CP-2023-0094-33419211-thumb
「楽しい道は任せて」AIが導く小型SUV、マツダが勝負に出た
CP-2023-0065-33467947-thumb
バービーのマーゴット・ロビー、SUV・EV・旧車が揃う5台のラインナップ
Depositphotos_465558100_S
高速道路で「バン!」タイヤが裂けた瞬間、3秒の判断が運命を変えた
CP-2023-0065-33485494-thumb
PPFフィルムは本当に守れるのか、専門家が語る実力とは
  • アクセスランキング

    走り方ひとつで燃費30%差、EVモードの“本当の使い方”
    マツダ、技術は完成しても“復活のゴーサイン”出ず…ICONIC SPを止めた現実
    「消えないピストンの鼓動」トヨタ、新V8で電動時代に反撃
    「数円節約の代償はAT崩壊」N変速の落とし穴、故障データが示す深刻さ
    「楽しい道は任せて」AIが導く小型SUV、マツダが勝負に出た
    バービーのマーゴット・ロビー、SUV・EV・旧車が揃う5台のラインナップ
    高速道路で「バン!」タイヤが裂けた瞬間、3秒の判断が運命を変えた
    PPFフィルムは本当に守れるのか、専門家が語る実力とは
    欧州攻略の号砲!三菱EVが日本勢の巻き返しを告げる
    トヨタGR工場の「0.1mm執念」400人だけが触れる道場、量産の常識が崩れる

    最新ニュース

    Depositphotos_665949402_S
    走り方ひとつで燃費30%差、EVモードの“本当の使い方”
    CP-2023-0065-33426688-thumb
    マツダ、技術は完成しても“復活のゴーサイン”出ず…ICONIC SPを止めた現実
    CP-2023-0065-33386577-thumb
    「消えないピストンの鼓動」トヨタ、新V8で電動時代に反撃
    CP-2023-0065-33465639-thumb
    「数円節約の代償はAT崩壊」N変速の落とし穴、故障データが示す深刻さ
    CP-2023-0094-33419211-thumb
    「楽しい道は任せて」AIが導く小型SUV、マツダが勝負に出た
    CP-2023-0065-33467947-thumb
    バービーのマーゴット・ロビー、SUV・EV・旧車が揃う5台のラインナップ

    主要ニュース

    CP-2023-0397-33440104-thumb
    欧州攻略の号砲!三菱EVが日本勢の巻き返しを告げる
    CP-2023-0078-33341516-thumb
    トヨタGR工場の「0.1mm執念」400人だけが触れる道場、量産の常識が崩れる
    CP-2024-0164-33504208-thumb
    クルマ好きの定番WD-40、応急時は頼れるが常用すると“逆効果”の恐れ
    CP-2023-0065-33360503-thumb
    アメリカで“最も走らない車”、それでも運転評価が高いマツダ・ロードスターの理由
    CP-2023-0065-33410935-thumb
    運転席に潜む“目に見えない毒”、家族を守るための完全マニュアル
    CP-2023-0397-33336911-thumb
    自動運転事故めぐり責任分争…米裁判が示した“新たな基準”