トヨタ・bZ5が登場
価格はテスラの半額?
航続距離は驚異の630km

トヨタが中国市場で本格的な反攻に乗り出した。FAWとの合弁で開発された「bZ5」は、価格・性能・デザインを大きく刷新した戦略モデルで、電気自動車の大衆化を狙う。中でも注目されるのが、最大航続距離630kmという圧倒的なスペックだ。中国専用モデルであるにもかかわらず、グローバルブランドのイメージにも影響を与える可能性があるとの見方も出ている。
すでに現地では予約販売が始まっており、価格は13万元(約258万円)から。これはテスラ・モデルYのほぼ半額にあたる。同セグメントの消費者層を積極的に取り込もうとする価格戦略は、これまで保守的とされたトヨタのEV方針とは一線を画しており、グローバル市場でも注目を集める可能性がある。


bZ3Cのリブランディング版
急速充電にも対応
bZ5は完全な新型ではなく、2023年に公開された「bZスポーツクロスオーバーコンセプト」および「bZ3C」をベースにしたリブランディングモデルとなる。セダン、ファストバック、クロスオーバーの要素を融合させたデザインが特徴で、ハンマーヘッド風のフロント、一体型テールランプ、スリムなルーフラインなどが洗練された印象を与える。前面と側面は装飾を抑え、シンプルながらも立体感ある造形に仕上がっている。車体サイズは全長4,780mm、ホイールベース2,880mmで、テスラ・モデルYとほぼ同等。プラットフォームにはトヨタ独自のEV専用アーキテクチャ「e-TNGA」を採用しており、静粛性や低重心による走行安定性にも期待がかかる。
注目すべきは、バッテリーにBYD製の「ブレードLFPパック」を搭載している点だ。65.28kWhと73.98kWhの2種類が用意され、それぞれCLTC基準で航続距離550kmと630kmを実現。急速充電にも対応し、30~80%の充電をわずか27分で完了できる。室内空間は控えめなトヨタらしい構成を基本としつつも、豪華な装備を揃えている。15.6インチの大型ディスプレイ、フローティングコンソール、デジタルメーターを備え、前席はベッドモードへの変形も可能。仮眠モード、パノラマサンルーフ、JBL製オーディオ、9つのエアバッグ、レベル2相当のADAS機能、さらに芳香剤噴射装置まで搭載されており、充実した内容となっている。


実用スペックと低価格
現実的なEVの新たな選択肢となるか
bZ5の性能面も見逃せない。モーターは200kW(約268馬力)、最大トルクは33.7kgf・mを発揮し、シングルモーター仕様ながら市街地から高速道路まで快適に対応できるとみられる。デュアルモーター仕様の有無は現時点では不明だが、基本性能は十分に実用レベルだ。静粛性や回生ブレーキの調整範囲なども、今後の試乗レビューで注目されるポイントになるだろう。
最大の強みはやはり価格にある。中国市場におけるbZ5の販売価格は13万元(約258万円)からで、テスラ・モデルY(約26万3,500元=約522万円)と比べるとほぼ半額。価格に敏感な層にとって、bZ5は極めて現実的かつ魅力的な選択肢となる可能性がある。トヨタはこれまでの信頼性や品質に加え、BYDとの協業によるバッテリーコストの最適化、高級装備の標準化、そして長距離走行性能まで取り入れた。この一台が「低価格EVは妥協の産物」という固定観念を覆せるかどうか、今後の動向が注目される。中国市場での反応次第では、新興国を中心にグローバル展開が進む可能性もある。