
日本でBYDの存在感が急速に高まっている。2026年第1四半期の日本国内でのBYD販売台数は前年同期比で100%以上増加し、2026年5月にも前年同月比50.3%増の1,032台が販売された。BYDは2026年夏、日本の軽自動車規格に合わせたEV「RACCO(ラッコ)」の発売を予告し、年間1万台の販売を目標に掲げた。販売が伸びるほど、2024年から2026年現在まで続くBYDの一連の火災事故にも、自然と注目が集まっている。
日本でBYDの存在感が急速に高まる 第1四半期は前年同期比2倍に伸びる
BYDは2023年に日本市場へ参入して以降、着実に販売を増やしてきた。2025年の日本での年間販売台数は前年比62%増の約3,870台を記録し、2026年には成長ペースがさらに速まった。2026年3月単月の販売台数は625台で、前年同月比91.1%増となり、第1四半期累計の1,142台は前年同期比で100%を超える伸びを示した。

日本国内のEV・PHEV市場全体で、BYDのシェアは2026年3月時点で3.7%まで上がった。夏に発売予定の軽EV「RACCO」が加われば、2026年下半期の販売はさらに加速するとみられる。日本の消費者にとってBYDは、もはや「名前だけ知っているブランド」ではなく、実際の選択肢になりつつある。
BYD関連の火災事故、2024年から相次ぐ
販売増加とともに、過去の火災関連事故も改めて注目されている。時系列で見ると、2024年5月、中国・福州のBYDショールームで火災が発生し、建物が全焼する事故が起きた。BYDは、出火元は建物側にあった可能性が高く、車両展示ホールでは火災がなかったと説明している。同年9月には、電動パワーステアリングコラム制御ユニットの部品欠陥(コンデンサーの微細な亀裂による短絡・過熱の火災リスク)を理由に、BYD「DOLPHIN」と「ATTO 3」9万6,714台のリコールが発表された。

2025年には、インドネシア・ジャカルタの住宅ガレージに駐車していたBYD「SEAL」から、原因不明の煙が上がる事故があった。2026年3月には、香港の道路を走行していたBYD「SEAL」で火災が発生した。調査の結果、車両の欠陥ではなく、車内に放置されたモバイルバッテリーの短絡が原因だったことが分かった。
同年4月には、10日間で2件の火災が相次いだ。4月9日、中国浙江省嵊州のFinDreamsブレードバッテリー生産工場で火災が発生し、4月14日には深圳・坪山にあるBYD本社敷地内の立体駐車場で大規模火災が発生した。焼失したのは試験車両と廃車のみで、負傷者や販売予定の新車への被害はなかったとされる。

BYDは、いずれの事故もバッテリー自体の発火ではないと説明した。5月25日には、インドネシア・タンゲランのBSDシティにあるBYDショールームの倉庫部分(部品・書類保管エリア)から出火し、消防車2台が出動した。人的被害はなく、火は当日中に消し止められた。
BYD「バッテリーに欠陥なし」…相次ぐ事故で信頼は試練に
BYDは「ブレードバッテリー」の安全性を主要なマーケティングポイントとしてきた。リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)をベースとするブレードバッテリーは、薄い刃のような形状のセルを積み重ねた構造で、放熱性が高く、外部からの衝撃にも強いというのがBYDの説明だ。2024年には、釘でバッテリーを貫通させても発火しない実験映像を公開したこともある。

実際、上記の事故のうち、BYDがバッテリー自体の欠陥を公式に認めた事例は2024年9月のリコールのみで、その他は外部要因、またはバッテリーと無関係の火災として説明されている。ただ、多くの消費者には、事故が起きた場所や原因の細かな区別よりも、「BYD」と「火災」が同じニュースに繰り返し登場するという事実そのものが印象に残る。
BYDの日本市場攻略は、本格的な軌道に乗りつつある。販売台数はその証左だ。ただし、ブランドへの信頼は販売台数だけで築かれるものではない。特に安全基準とブランドイメージに敏感な日本の消費者を相手に、2024年から積み重なってきた火災関連の問題について、BYDがどう正面から説明していくかが、日本市場への定着を左右する重要な要素になりそうだ。