
冬の厚手のコートを着用して運転することがシートベルトの保護機能を低下させ、事故時の負傷リスクを増大させるとの研究結果が発表された。ドイツ自動車連盟(ADAC)は、車両衝突テスト用ダミーを用いた実験を通じてこの結果を公開し、注意を呼びかけている。
ADACの研究チームは、大人と子供の体型を模したダミーに厚手の冬用コートを着用させ、実験を行った。コートを着たダミーを車両用シートおよびチャイルドシートに座らせてシートベルトを着用させた後、試験車両を時街地での追突事故を想定した時速16キロで衝突させた。
実験の結果、厚手の衣服によってシートベルトが本来の位置から腹部へと押し上げられ、内臓を強く圧迫する現象が確認された。安全装置であるはずのシートベルトが、衣服の厚みによって身体への危険要因に転じた形だ。
ADACは「実際の事故では、腸、肝臓、脾臓などの内臓損傷や内出血のリスクが著しく高まる」と分析している。また、厚手の衣服によってベルトに隙間が生じるほど、衝突時の姿勢制御性能が低下し、搭乗者の体が前方に大きく投げ出されることで、脊椎の損傷や頭部外傷を招く恐れがあると警告した。
米自動車協会(AAA)や米運輸省道路交通安全局(NHTSA)などの機関も、同様の見解を示している。これらの機関は、厚手のコート着用によりベルトの密着力が損なわれ、保護効果が激減すると指摘。特にチャイルドシートを使用する子供の場合、衝突の衝撃で座席から体がすり抜けて脱出してしまうリスクが高まると分析している。
シートベルトは事故時の被害を軽減する極めて重要な装置だが、不適切な使用は逆効果となる。着用時はベルトがねじれていないかを確認し、首ではなく肩の中央を通るように調節しなければならない。また、腰ベルトは腹部ではなく、骨盤(腰骨)の低い位置に密着させることが重要である。ADACなどの専門機関は、乗車前にコートを脱ぐか、着用したままの場合はベルトをコートの内側に通して身体に密着させるよう推奨している。