ついに生産終了のアウディ・TT
突然の「EV復活説」に騒然
1枚のレンダリングが巻き起こした波紋

アウディを象徴するスポーツカーのひとつ、TT。1998年に初代モデルが登場したこの前輪駆動クーペは、ビートルを思わせる独特なデザインと軽快な走行性能で注目を集めた。累計販売台数は66万台を突破し、スポーツカー市場で存在感を放ってきたが、SUVとクロスオーバーに注力するアウディの戦略により、2023年に生産を終了した。
縮小傾向が続くスポーツカー市場において、また一台の名車が姿を消したことに多くのファンが惜別の声を上げた。ところが最近、アウディがTTを電気自動車(EV)として復活させる可能性に言及したことで状況が一変。各メディアではTTの電動化を想定した仮想レンダリングが次々と公開されるなか、特に話題となっているのが、完成度の高いある1枚のCGイメージだ。


アウディのコンセプトカー要素を総動員
それでも現実的と言える理由は?
仮想レンダリングを専門とするユーチューバー「Theottle」が公開した、アウディTTのEV版を想定したCGデザインが注目を集めている。このデザインは、e-tronスポーツバックコンセプトのボディをベースに、TT最終モデルや複数のコンセプトカーから意匠を引用して構成されたものだ。
フロントフェイスとホイールはPB18 e-tronコンセプトから取り入れ、TTらしいルーフラインと自然に融合。EVでありながら大型グリルが存在感を放ち、ボンネットには深いキャラクターラインが刻まれ、アグレッシブな印象を与えている。従来の丸みを帯びたTTのイメージとは一線を画すが、アウディがコンセプトカーを通じて次期モデルのデザイン言語を示す手法を採っていることを踏まえれば、このレンダリングにも一定の現実味があると評価されている。


最新トレンドを取り込みながら
TTの個性も維持
リアデザインにもTT特有のシルエットがしっかりと残されている。水平基調のテールランプやシンプルに削ぎ落とされたトランクリッドは、e-tronスポーツバックコンセプトの特徴を踏襲しつつも、矢印型のディテールを省くなど独自性も備えている。
従来の曲面主体のデザインを抑え、ディフューザーの面積を拡大したリアバンパーも大きな変化のひとつ。リアクォーターパネルの力強いボリュームがクーペらしいスポーティさを際立たせ、サイドスカートもe-tronスポーツバックからの流用が確認できる。ドアハンドルは半埋め込み式となり、空力性能と実用性を両立している点も注目される。


アウディCEOが示唆した「あの言葉」
あのロマンは再び蘇るのか
アウディのCEO、ゲルノート・デルナー氏は今年3月、海外メディアのインタビューで「TTはブランドのアイコンであり、アウディにスポーツカーは必要不可欠だ」とコメント。R8の後継モデルがハイブリッド化される一方で、TTの後継については「完全なEVとなる可能性が高い」と語っている。従来のTTがフォルクスワーゲン・ゴルフのプラットフォームをベースにしていたことを踏まえれば、次期モデルはグループのEV専用アーキテクチャ「MEB」を採用する可能性が高いと見られている。
今回のレンダリングは一見するとファンによる空想作品のようにも映るが、アウディの未来志向を象徴する一枚として高く評価されている。果たして、TTが持っていたスポーツカーとしてのDNAを継承しつつ、アウディの最先端電動技術をまとった新たな姿で再登場する日は来るのか。軽量スポーツカーの不在が続くいま、自動車業界の注目がアウディの次の一手に集まっている。