
右に出すのか、左に出すのか。バイパスの進入路のように本線へ斜めに寄り添っていく地点で判断が割れる根拠は、ドライバーの感覚ではなく法令にある。ハンドルを切る動作が同じでも、道路交通法がその行為を「進路変更」とみなすか「交差点での左折」とみなすかによって、正解は正反対になる。確かめるべきは自車の車体角度ではなく、いま走っている道路がどういう構造として設計されているかだ。
意外な落とし穴になるほうから見ていきたい。合流の直前に停止線が引かれていたり「止まれ」の標識が立っていたりする場所、そして加速車線を持たない側道が本線へ突き当たるように接続している形状の地点である。この構造は法令上、交差点として扱われる。ここから本線へ入る行為は進路変更ではなく左折に当たるため、感覚としては右へ回り込んでいくとしても、点滅させるのは左ウインカーだ。一時停止の規制がかかっている地点であれば、道路交通法第43条により停止線の直前で必ず停止したうえ、交差する道路を通行する車両の進行を妨げてはならないという義務まで伴う。
これに対し、インターチェンジやサービスエリアの出口、本線に沿って長く伸びる加速車線から流れ込む形であれば、扱いは進路変更となる。左側から斜めに入っていくとしても、右隣の本線へ車線を移すという意思表示になるため、正解は右ウインカーだ。車体がいくらか左を向いていようと、道路が合流方向へ緩くカーブしていようと、この判断は変わらない。なお加速車線が設けられた区間では、第75条の7によりその車線を使って進入することが義務づけられており、本線を走る車両との速度差を詰めること自体が法的な要求事項ということになる。
走行中に瞬時に見分けるには、標識と路面表示に目をやればいい。本線との境界が白い破線で続き、十分に加速できるレーンが確保されていれば右。赤い逆三角形の一時停止標識があったり、交差点の形をしていたりすれば左である。
合図を出すタイミングにも規定がある。道路交通法施行令第21条は、進路変更なら行為の3秒前、右左折ならその地点または交差点の30m手前に達したときに合図を出すよう定めている。出さなければ合図不履行となり、普通車で反則金6000円と違反点数1点が科される。実際の運転でも、加速車線に入った直後から早めに点滅させておくほうが有利だ。合流してくるクルマの存在を本線側のドライバーが先に把握できれば、減速や車線の譲り合いにつながり、進入は格段に滑らかになる。
もっとも、合図を正確に出したという事実だけで安心はできない。車体が本線に対して斜めに傾いた状態では、右斜め後方を走る本線の車両がドアミラーやピラーの陰に完全に隠れてしまう瞬間が生じる。ミラーの確認だけに頼らず、首を大きく振って死角を自分の目で直接チェックする動作が欠かせない。しかも第75条の6は、本線車道を通行する自動車の進行を妨害してはならないと規定しており、合流する側が流れに合わせて入っていく立場であることを明確にしている。
結局のところ、ナナメ合流のウインカーは道路構造を読み取る問題に帰着する。一時停止のある交差点型なら左、加速車線のある構造なら右。この二つさえ整理しておき、早めの合図と目視確認を習慣づければ、緊張の対象だった合流地点は走行の自然な出発点へと変わっていく。