
自動車大手のホンダが、米国の新興電池開発会社クアンタムスケープと手を組み、「夢の電池」と呼ばれる全固体電池(Solid-State Battery)の共同研究開発に乗り出した。電気自動車ラインナップの見直しや業績不振に苦しむ中にあっても、電動化の将来を左右しかねない次世代技術への投資を加速する動きといえる。
ブラジルの技術専門メディア「Olhar Digital」が8月1日(現地時間)に報じたところによると、本田技術研究所は今年6月、米カリフォルニア州サンノゼに本社を置くクアンタムスケープと、次世代全固体電池プラットフォームおよび量産技術の開発に向けた複数年にわたる共同研究契約を締結した。
技術評価通過後に協力を決定…フォルクスワーゲンに続きクアンタムスケープの主要パートナーに
今回の協力は、ホンダがクアンタムスケープの全固体技術プラットフォームについて詳細な技術評価とベンチマークテストを終えた直後に実現した。
本田技術研究所 先進技術研究所長(COO)の小川厚氏は「クアンタムスケープの技術プラットフォームは、自社の評価過程で説得力のある独自の優位性を示した」と述べ、「自動車をはじめ幅広い分野で価値を生み出す可能性がある」と語った。
これにより、ホンダはドイツのフォルクスワーゲングループ傘下の電池会社パワーコー(PowerCo)に続き、クアンタムスケープの主要な自動車メーカーパートナーとしての地位を固めた。
航続距離500マイル・数分で80%充電…中国産負極材依存からの脱却
全固体電池は、従来のリチウムイオン電池が使う可燃性の液体電解質を、酸化物や硫化物、高分子といった固体材料に置き換えた技術だ。液漏れや発火のリスクがなく安全性が大きく高まるほか、従来の黒鉛・シリコン負極材の代わりにリチウム金属を用いることで、エネルギー密度を最大限に高められる。
クアンタムスケープによれば、全固体セルを採用すれば、従来350マイル程度だった電気自動車の航続距離が400~500マイル(約640~800km)まで伸びる。ホンダ側は、数分で80~90%まで急速充電できるようになるとみている。
黒鉛負極材を使わない構造上の特性から、電池の供給網における中国産素材への依存を大きく減らせる点も利点といえる。
2040年電動化100%目標と、データ・ロボット新興市場への布石
両社は自動車分野に加え、高いエネルギー密度と安定性が求められるデータセンターやドローン、ロボットなど新興市場への展開拡大も視野に入れている。
ホンダは今回の全固体技術の確保を踏まえ、2050年のカーボンニュートラル実現、および2040年までに世界の新車販売の100%を電動車とするという長期目標に向け、取り組みを進めていく方針だ。
ホンダとクアンタムスケープによる次世代全固体電池の商用化に向けた取り組みは、今後、電池供給網における中国依存の解消や、次世代モビリティ用電池の価格低下を促す要因となる可能性がある。