フェラーリ、EV需要低迷の逆風で創業初の純EV「ルーチェ」を9,200万円で市場投入

引用:フェラーリ
引用:フェラーリ

イタリアの高級スポーツカーメーカー、フェラーリが創業以来初の純電気自動車「ルーチェ(Luce)」を公開し、電動化をめぐる大胆な賭けに打って出た。電気自動車の需要が鈍化し、主要スポーツカーメーカーが電動化計画に修正を加える動きが相次ぐ中でのことだ。

ロイター通信によると、フェラーリは25日(現地時間)ローマでルーチェの発表会を開催した。価格は50万ユーロ(約9,200万円)以上で、4ドアセダン型ボディに最高時速310kmを記録する。10月に初の顧客への引き渡しが始まる予定だ。

■リスクを取るフェラーリ、電動化で先行する

経営コンサルティング会社グラントソントン・スタックスの常務取締役フィル・ダン氏は「これは危険な賭けではあるが、フェラーリが先頭を切るという意味でポジティブな動きだ」と評価した。

フェラーリがルーチェを公開した時期は業界のなかでも異例だ。イタリアのライバル、ランボルギーニは顧客需要の低迷を理由に2030年の電気自動車投入計画を撤回した。フェラーリ自身も2番目の電動モデルの発売を需要低迷を理由に2028年以降に延期したと、ロイター通信が報じている。

それにもかかわらずフェラーリがルーチェを発表したのは、市場シェアの拡大よりもブランドポジショニングを意図した戦略的な動きとの見方が出ている。

自動車産業調査会社カー・インダストリー・アナリシスのフェリペ・ムニョス氏は「フェラーリはルーチェを大量販売モデルと位置付けていない」と述べ、「中国メーカーが最新の電気自動車開発をリードする中、フェラーリが一つの意思表示をしているのだ」と分析した。

さらに「今すぐ電動スーパーカーが必要とされないかもしれない。ただし電動化は長期的に不可逆の流れであり、他のメーカーに先んじてフェラーリが高級電動化の基準を打ち立てる必要がある」と指摘した。

中国BYDが猛追——半値で匹敵する性能が突きつける競争の現実

実際、中国BYDの高級ブランド仰望は4つの電動モーターで1287PSを発揮し、0-100km/h加速2.36秒を達成する電動スーパーカー「U9」を中国国内で168万元(約3,940万円)で発売した。

ルーチェの半分以下という価格帯でありながら匹敵する性能を持つ中国製電動スーパーカーの登場は、ヨーロッパの高級スポーツカーメーカーに現実的な競争圧力をかけている。

■12年の電動化の道のりの末に誕生したルーチェ

ルーチェの誕生は一朝一夕にはなしえなかった。フェラーリの電動化は2014年のF1ハイブリッドパワートレイン導入まで遡る。その後2019年に初の量産型ハイブリッドモデル「SF90ストラダーレ」を発売し、技術を積み重ねてきた。

フェラーリのベネデット・ビーニャCEOは2021年の就任以来、電動化を加速させた。イタリア・マラネッロ本社に電気自動車専用の生産施設「eビルディング」を新設し、電気自動車とハイブリッド車の生産体制を整えた。

ルーチェには4つの永久磁石同期電動モーターが搭載され、四輪駆動を実現するとともに、1000PS以上の最高出力と122kWhのバッテリーを備える。

外観と室内のデザインは、元Appleのチーフデザインオフィサーであるジョニー・アイブ氏が設立したデザインスタジオ「LoveFrom」が手がけた。5年にわたる協業を通じて完成した室内は、タッチスクリーンに代わりリサイクルアルミニウムの削り出しによる、触覚に訴えるアナログ操作系を前面に打ち出している。

ルーチェという名前はイタリア語で「光」を意味し、外観は既存のフェラーリモデルとは一線を画す大型ボディを採用している。

12年の電動化の道のり——1000psを誇るルーチェの技術的全貌

フェラーリにとって最大の課題は、全く新しい技術を採用しながらもブランドアイデンティティを守ることだ。バッテリーは重量が増し、内燃機関が持つ継続的な出力特性や感性への訴求力に欠けるとされ、既存の高性能ブランド各社が課題とする点でもある。

フェラーリはこれを克服するため、パワートレインの振動を活用・増幅させ、電気自動車でも「フェラーリらしい」サウンドを生み出す専用音響システムを開発した。

ダン氏は「フェラーリと聞いて誰もが連想する三つは外観、音、走行感覚だ」とし、「電気自動車に移行するとなれば、この三つを別の手段で実現しなければならない」と述べた。

■電動車比率を20%に修正、内燃機関・ハイブリッドと並行

フェラーリの電動化目標は実態に合わせて修正された。純電気自動車の販売比率を2030年時点で20%とする計画に改めたが、これは従来の目標値40%から半減させたものだ。フェラーリはハイブリッドと内燃機関モデルの生産を引き続き行う。

ビーニャCEOは今年2月、「顧客の反応は非常に好意的だ」と述べ、3月から事前予約の受け付けを開始するとしていた。フェラーリはルーチェが伝統的な顧客層の全員を満足させられない可能性があることを認めている。

若い富裕層は電気自動車により開放的な姿勢を持ち、原油価格の高騰も電気自動車の魅力を高める要因として作用するという分析が出ている。

ダン氏は「ルーチェがフェラーリの全顧客に響くわけではないだろう。しかし一定の顧客層には確実に訴求する」と述べた。

市場ではルーチェ1モデルの成否よりも、今回の発表がヨーロッパの高級車業界における電動化ペースを測る試金石となるかが注目されている。

9,200万円の賭け——EV需要低迷の逆風でフェラーリが選んだ道

フェラーリが「フェラーリらしさ」を電気自動車にどう体現するかは、ポルシェやアストンマーティンなどのライバルブランドが電動化のペースを判断する上でも影響を与えるとみられる。

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