
車内の横滑り防止装置(ESC)と電動パーキングブレーキ(EPB)など自動車のボタンに隠された操作方法を把握しておけば、緊急時にブレーキが利かなくなった場面や悪路でスタックした状況でも、実質的な事故対応能力を高めることができる。
核心事項
自動車のESCボタンを3秒間長押しすると、横滑り防止装置と駆動力制御機能が同時に解除され、雪道や泥道でのスタック脱出時に役立つ。
走行中にEPBスイッチを長く引くと、ABSと連動した四輪への緊急ブレーキ機能が作動する。
空気圧補充後も警告灯が点灯している場合は、TPMSリセットボタンを長押しして現在の空気圧を新しい基準値として保存する必要がある。
運転歴が長くても、自車の全機能を把握するのは難しい。特に、短押しと長押しで動作が異なるボタン機能は、取扱説明書を熟読しないと存在自体を見落としがちだ。ESCやEPBのようなボタンを単なるオン/オフスイッチ程度にしか理解していないドライバーが多いのも、こうした理由による。

ただし、長押し操作の中には単なる利便性にとどまらず、安全に直結するものも含まれている。車種・年式・グレードによって対応状況が異なるため、自車に備わっている機能を把握することが実用的な第一歩となる。
ESCボタン3秒長押しで車体制御と駆動力制御を同時解除
ESCボタンを短く押すと、トラクションコントロールシステム(TCS)のみが優先的に解除される車種が多い。一方、3秒程度長押しすると「ESC OFF」警告灯が点灯し、ESCとTCSが同時に解除される。
この状態は、雪道や泥道でタイヤをある程度空転させないと脱出できない場合に有効だ。2〜3速発進に緩やかなアクセル操作を組み合わせると効果が高まる傾向がある。

ただし、脱出後は必ずボタンを操作してESCとTCSを元の状態に戻す必要がある。完全解除状態のまま走行を続けると、制動と旋回安定性が大きく低下し、事故発生時の過失責任が重くなる可能性がある。
EPB長押しでABS連動緊急ブレーキ作動
EPBスイッチを走行中に短く引くと、車種によっては警告音やメッセージのみが出力されることもある。一方、長く引くと油圧ブレーキシステムが介入し、ABS制御下で四輪を同時制動する緊急ブレーキ機能が作動する。
ブレーキペダルの油圧が低下・喪失した際の最終手段となる機能だ。ブレーキ不能が疑われる場合は、EPBによる緊急ブレーキとともにハザードランプを点滅させ、クラクションを繰り返して二次事故の危険を減らすことが重要だ。

ブレーキ装置に関連する事故は全交通事故の一定割合を占めるとされており、この機能の存在を普段から把握しておくことが重要だ。ただし、繰り返し使用するとリアブレーキとEPBモーターの過熱につながる可能性があるため、緊急時にのみ使用するのが望ましい。
TPMSリセット長押しで生じる変化
タイヤ空気圧監視システム(TPMS)の警告灯が点灯した後、空気を補充しても警告が消えない場合がある。このとき、TPMSリセットボタンを数秒間長押しすると警告灯が点滅し、現在の空気圧を新しい基準値として保存する。
間接式TPMSはホイールの回転速度アルゴリズムを活用するため、リセット時点の空気状態を正常値として学習する。直接式の一部モデルでは、車両設定メニューで現在の圧力を直接登録する方式を採用している。

乗用車の推奨タイヤ空気圧は220〜250kPa程度が一般的な目安とされており、空気圧が大きく低下すると発熱やバースト(破裂)の危険が高まる。タイヤの欠陥や空気圧異常に起因する事故も一定数報告されているが、TPMSの警告を無視したり、空気補充後もリセットせずに放置したりすることは避けたい。
その他の自動車ボタンにも「長押し」に機能が隠れている
スマートキーのロック解除ボタンを長押しすると、窓とサンルーフが一斉に開くグローバルオープン機能が作動する車種がある。逆にロックボタンを長押しすると、窓がすべて閉まるグローバルクローズも一部でサポートされている。
ただし、車種によって対応状況が異なり、機能がある場合でも子供やペットが車内にいる際はリモート操作を絶対に行わないこと。

パワーテールゲートボタンを希望の高さで長押しすると、「ピッ」という音とともにその高さがメモリーに保存される。地下駐車場の天井との干渉を避けるには、1,500〜1,700mmの範囲で設定しておくと便利だ。
Apple CarPlayやAndroid Autoが接続された車両では、ステアリングの音声ボタンを1〜2秒長押しすると、車載音声認識の代わりにスマートフォンの音声アシスタントが起動し、電話・メッセージ・目的地検索などをハンズフリーで利用できる。

車内には、ボタンを押す時間の違いによって全く異なる動作をする機能が数多く設計されている。これを知らないと緊急時に活用できる機能を見逃すことになり、単なる利便性の問題では済まない。
まずは愛車の取扱説明書でESCの解除手順、EPB緊急ブレーキ機能の有無、TPMSリセットの操作位置を確認しておきたい。普段から一度把握しておけば、雪道でのスタック脱出からブレーキ緊急対応まで、実際の状況でより冷静に対処できるはずだ。