
マツダ(Mazda)を象徴する存在であり、自動車ファンの心を高鳴らせるものといえば「ロータリーエンジン(Rotary Engine)」だ。内燃機関が転換期を迎える中でもロータリーエンジンへのこだわりを捨てなかったマツダが、2026年1月に出願し、最近公開された新たな技術特許を通じて、その本格復活を示唆した。今回の特許は、ツインローター構造にターボチャージャーを組み合わせた高性能ロータリーエンジン専用の「排気ガス再循環(EGR)」システムに関するものだ。従来のロータリーエンジンの構造的な弱点とされてきた排出ガス問題や熱管理の限界を、革新的な冷却機構によって克服することが特徴となっている。しばらくの間、発電機としての役割にとどまっていたロータリーエンジンが、再び車両を直接駆動する高性能内燃機関として復活する可能性が浮上し、世界の自動車ファンから注目を集めている。
今回の特許の核心は、エンジン内部のサイドハウジングに排気ガスの通路を直接通す構造にある。高負荷走行時に発生する高温の排気ガスは、ハウジング内部を通過する際にまず冷却水によって熱を奪われ、その後、別体の小型EGRクーラーへ送られる設計となっている。これにより、エンジンルーム内に追加のスペースを必要とせず、大量の冷却された排気ガスを再びエンジンへ循環させることが可能になる。また、高エネルギーの排気ガスはターボチャージャーへ送り出力向上に活用する一方、比較的温度の低い排気ガスはEGRシステムへ分けて供給する「2系統の排気経路」も採用した。排気温度が高く、未燃焼炭化水素(HC)の排出量も多いため、厳格化する環境規制への対応が難しかったロータリーエンジンの弱点を、高度な熱制御技術によって克服する狙いだ。

ピストンが上下運動する一般的なレシプロ式内燃機関とは異なり、ロータリーエンジンは三角形のローターが回転することで動力を生み出す独自の構造を持つ。マツダは1967年、「コスモスポーツ」で世界初の実用化に成功して以降、出力向上と排出ガス低減のための改良を重ね、独自のブランドアイデンティティを築いてきた。2012年にスポーツカー「RX-8」が生産終了となったことで、駆動用エンジンとしては姿を消したかに見えたが、2023年にはプラグインハイブリッドSUV「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」で再び活用された。コンパクトで高出力というロータリーエンジンの特徴を生かし、車輪を直接駆動するのではなく、電気モーターに電力を供給する「発電機」として復活を果たした。
マツダは2024年からロータリーエンジン専任の研究開発(R&D)チームを再結成し、主要国で厳格化する排出ガス規制への対応とともに、環境負荷の低い合成燃料「e-Fuel」の活用に向けた研究も続けている。最近では市場環境や生産優先順位の変更により、欧州市場でのMX-30 R-EVの販売は終了したものの、マツダが見据えているのは単なる発電用ロータリーの先にある。今回の特許に記されたツインローター・ターボ構造は、単なる発電用仕様ではなく、車両を直接駆動する高性能スポーツカーへの搭載を想定したものだからだ。マツダは正式な量産計画を明らかにしていないものの、次世代ロータリースポーツカーの登場を待ち望むファンにとって、今回の特許はブランドの強いこだわりと高性能ロータリーエンジン復活の可能性を示す明確な布石と受け止められている。