
この20年余りで、自動車のオプションと機能は完全に様変わりした。その過程で、カタログからひっそりと姿を消していった装備も少なくない。こうした変化が最も顕著なのが、日本の自動車市場だ。昭和から平成初期の国産車に存在した独特なオプションを振り返ってみたい。今では見慣れないものも、当時は当たり前の装備だった。
女性向けグレードと灰皿が存在した時代
昭和から平成初期の日本の自動車市場では、軽自動車だけでなくカローラ級の小型車にも「女性仕様車」がラインナップとして設定されていた。スプリンタートレノのAE85系には「XLリセ」、カローラレビンのAE85系には「ライム」という女性向けグレードが設定されており、いずれもAE86とは別の1.5Lエンジン搭載モデルを基に設定されたものだった。広告には各界で活躍する女性モデルが登場するのが定番だった。こうした女性向けグレードは現在では完全に姿を消した。
そのダッシュボードの「一等地」を占めていたのが、灰皿とシガーソケットだった。当時のドラマには、リビングでも車内でも自然な流れで喫煙シーンが登場するほど、喫煙者の多い時代だった。灰皿自体は消えたが、シガーソケットはアクセサリーソケットという名称で、今も多くのモデルで生き続けている。

「頭文字D」でも知られる速度警告チャイム
速度警告チャイムは当時を直接経験した世代だけでなく、日本の人気漫画・アニメ「頭文字D」を通じてその後の世代にも広く知られるようになった。普通乗用車は約100km/h、軽自動車は約80km/hを超えると警告音が鳴る仕組みとなっており、法定最高速度を超えたことを運転者に知らせる役割を果たしていた。
この装置は1974年11月の保安基準改正で装着が義務化された。しかし輸入車メーカーとその本国政府からの強い反発や、「チャイム音が逆に眠気を誘発する」という意見が相次ぎ、1986年3月には義務化が廃止され、その後徐々に姿を消していった。法令で義務付け、その後法令で廃止するという異例の経緯をたどった装置だ。

高級感の証だったガラス演出と回転対面シート
現在のミニバンではサイドウィンドウへのプライバシーガラス採用が一般的だが、昭和後期から平成初期にかけては異なるアプローチによるガラスの演出が流行していた。白ボディには前面ブロンズガラス、その他のボディカラーにはフロントグラデーションガラス(フロントウィンドウ上部を青色系に処理したもの)、いわゆる「ティンテッドガラス」が高級感の証とされていた。もともとは高級車専用だった仕様だが、昭和後期から平成初期にかけて大衆車クラスへも徐々に広まった。
「ワンボックスワゴン」全盛期の人気オプションとして、回転対面シートとフルフラットシートがあった。中列シートを180度回転させて後部座席と向かい合う構造で、トヨタ エスティマの姉妹車「エスティマルシーダ」「エスティマエミーナ」もこの機能を備えたモデルが大きな人気を集めた。ただし進行方向と逆向きになる中列シートは酔いやすいという難点もあった。

かつては高級の証でもあった「マッドガード」
今はオプションカタログでさえ見つけるのが難しいマッドガード(別名「泥除け」)もかつては自動車の品格を測るオプションだった。雨天走行時に車体に跳ねる泥を防ぐ実用的な機能のほか、上位グレードの標準装備に限られていたため、一種の憧れの装備でもあった。

例として1981年発売のトヨタ カローラセダン(1500GL)では、SEとGTグレードのみ標準装備とされ、それ以外のグレードはディーラーオプションでの購入が必要だった。装着の有無で外観が大きく変わったと、当時を知る人たちは口を揃えている。現在はオプションとしても設定されないモデルがほとんどだ。
時代の変化とともに、喫煙人口の減少、法規制の改正、生活環境の変化などを背景に、こうしたオプションは次第に姿を消していった。現在の新車カタログには影も形もないこれらのオプションが、かつては確かに販売されていたという事実は、自動車と時代の移り変わりを同時に実感させる。