
トヨタ自動車は工場と研究現場において、人工知能(AI)を人員代替の手段として活用しない方針を示した。人員削減ではなく、従業員教育や生産効率の改善、組織内のメンター機能としての活用を推進する方向性を打ち出している。
この方針は、製造業全般でAI導入が加速するなか、自動化による雇用減少への懸念に対する一つの回答として受け止められている。トヨタはAIによって人員を削減するのではなく、人間の作業能力を拡張することに重点を置く姿勢を示している。

ウーブン・バイ・トヨタ主導の自社内AI開発
AI開発の主導はトヨタのソフトウェア・モビリティ子会社であるウーブン・バイ・トヨタが担っている。同社はインフォテインメントおよび先進運転支援システム(ADAS)の開発を担い、独自のAIモデル構築も推進していると説明している。
ウーブン・バイ・トヨタは、外部技術との連携の可能性は残しつつも、長期的には中核となるAI技術を自社内で管理・制御する戦略を維持していく考えを示した。目標は単なる技術の活用にとどまらず、「人間中心のAI」の実現にあるとしている。

AIが熟練エンジニアの作業を学習し新人教育
例えば、AIが熟練したエンジニアや生産ライン作業者の作業パターンを分析して優れた事例を蓄積し、新入社員の教育に活用する方式が検討されている。生産工程における非効率な要素の検出・改善にも活用できるとしている。
ウーブン・シティでの実証実験
こうした取り組みの中心に位置するのが、静岡県裾野市の実証実験都市「ウーブン・シティ」だ。研究・居住・実験の各機能を備えた複合施設で、自動運転、スマートインフラ、AIの各技術の実証が並行して進められている。

豊田章男AIによる経営哲学の継承
トヨタ会長の豊田章男氏の哲学を学習した「豊田章男AI」が社内で活用されていることも明らかになっている。同システムは豊田氏の経営哲学と意思決定の考え方を反映したもので、従業員へのアドバイスを果たす。
トヨタはこうした取り組みを通じ、AIは人間を代替する技術ではなく、人間の判断と経験を補完する道具であるべきだというメッセージを打ち出している。今回の動向は今後のグローバル製造業におけるAI戦略にも影響を与えうるとして、注目が集まっている。