
世界最大の自動車部品サプライヤーである独ボッシュが、北米自動車市場の電動化への転換速度について冷静な分析を示した。ボッシュ北米法人のポール・トーマス社長は、1月にラスベガスで開催された「CES2026」でのインタビューに応じ、2035年時点でも北米で販売される新車の約70%が依然として内燃機関を搭載しているとの予測を明らかにした。
これは、電気自動車(EV)が短期間で市場を完全に支配するという一部の楽観論とは対照的な数値である。従来のガソリンエンジンが、単独の動力源としてだけでなく、ハイブリッド車(HV)やレンジエクステンダーEV(EREV)の主要コンポーネントとして存続することを示唆している。
ボッシュは、電動化、ハイブリッド、そして内燃機関という「3つの軸」をバランスよく維持する戦略を強調している。トーマス氏は、ガソリンエンジンが淘汰されるのではなく、バッテリー充電のみを担当する発電機としての役割を果たすなど、その方式が進化していると説明した。実際に、フォード・モーターは電気ピックアップトラック「F-150ライトニング」へのレンジエクステンダー(発電用エンジン)搭載モデルの導入を検討しており、日産自動車も次世代「ローグ」に独自の「e-POWER」システムを北米で初導入する方針を固めている。こうしたメーカー側の動きも、ボッシュの分析を裏打ちするものとなっている。
市場の変化は、米国の政策的要因とも密接に結びついている。EV購入補助金の削減や、排出ガス規制の柔軟な運用(適用猶予など)により、メーカー各社は「EVシフト一辺倒」の戦略から脱却し、ハイブリッド車の比率を高める方向へと舵を切った。ボッシュはこうした流れを背景に、10年後の2035年においても、米国内でのバッテリーEV(BEV)のシェアは全体の30%水準にとどまると見ている。
一方でボッシュは、内燃機関の存続が環境技術の後退を意味するものではないと一線を画した。排出ガス低減のための技術改善に継続的に投資しており、エンジン効率を最大化することが脱炭素化に向けた「現実的な解(ブリッジ技術)」としての役割を果たすと説明している。
消費者の動向としても、EVの高価格や充電インフラの未整備に対する不安を、ハイブリッド車という実効性のある代替案で解消しようとする傾向が強まっている。内燃機関技術の重要性は、当面の間、自動車産業の根幹として維持される見通しだ。