「日産の工場で兵器を作る」米スタートアップ・アンデュリルが日産工場を狙う、自動車聖地の衝撃的な転身

日産工場 アンデュリル ドローン 引用:日産自動車
引用:日産自動車

戦後日本の経済成長を象徴してきた日産自動車の工場が、軍用ドローンの生産拠点に転換される可能性が浮上している。米国の新興防衛企業アンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)が、操業停止を控えた日産追浜工場の買収を検討中だと伝えられている。2年連続で大規模な赤字に苦しむ日産への構造改革圧力と、防衛費をGDP比2%水準に引き上げた政府の防衛政策転換が相まって、取引が実現に向かっているとの見方が強まっている。

アンドゥリル、自衛隊納入ドローンの生産拠点を模索

2026年6月25日のロイター通信の報道によると、アンドゥリル・インダストリーズは神奈川県横須賀市にある日産追浜工場を取得し、自衛隊などに納入する軍用ドローンの主要生産拠点として活用する案を検討中だという。取得時に現在勤務する従業員の多くをドローン製造要員として採用する案も同時に議論されていると伝えられている。

引用:アンドゥリル・インダストリーズ
引用:アンドゥリル・インダストリーズ

2017年に設立されたアンドゥリルは、無人機やAI防衛システムの開発で急成長を遂げた防衛スタートアップだ。同社は2025年12月に東京に日本法人を設立し、複数の国内企業と提携して部品を全量国内で調達する「純日本産ドローン」の開発を推進している。ただ、取得実現のカギは自衛隊からどの程度の受注を確保できるかにかかるとの見方が強い。

経営危機が生んだ逆説的な機会

EV転換の遅れ、中国系電気自動車の急成長、米国の関税政策の悪化が重なり、日産は深刻な経営危機に陥っている。今回の交渉はそうした状況を背景に浮上した。日産は2025年5月に全世界で2万人の人員削減、7か所の工場閉鎖を柱とした大規模な経営再建計画「Re:Nissan」を発表し、日産初の量産型EV「リーフ」を生産してきた追浜工場もその対象となった。生産は日産自動車九州(福岡県苅田町)へ移管・統合される予定で、九州への転居が難しい従業員を含む約2,400人の雇用問題が日産の課題として残っていたため、アンドゥリルの雇用継承の提案は日産側にとっても魅力的に映る。

引用:日産自動車
引用:日産自動車

政府の姿勢も後押しとなっている。小泉進次郎防衛相は2025年12月にアンドゥリル創業者のパルマー・ラッキー氏と直接面談した後、2026年4月の国会答弁でアンドゥリルと米GMの協力事例を挙げ、「防衛産業と自動車産業の理想的な協力モデル」と評価した。

平和国家日本に投げかけられた象徴的な問い

政府はウクライナ戦争を契機にドローンの戦術的重要性を再認識し、2027年までに数千台のドローンを配備する「シールド構想」を推進中だ。GDP比2%水準に拡大された防衛費を背景に、グローバル防衛企業の投資誘致にも積極的に取り組んでいる。

引用:首相官邸
引用:首相官邸

ただ、買収が実現するまでには地域社会の理解を得るという課題も残る。追浜工場が立地する横須賀市は海上自衛隊と米海軍基地が共存する軍事上の要衝であり、小泉防衛相の選挙区でもある。民生用の自動車工場が防衛装備品の製造施設に転換されることへの地域住民の心理的な抵抗は、依然として根強い。横須賀市当局は「工場用地の活用が雇用創出と地域経済の活性化に寄与しなければならない」として、慎重な姿勢を示している。

引用:日産自動車
引用:日産自動車

自動車工場からドローン工場へ、日本産業の地図が塗り替わる

ロイター通信は今回の買収が成立すれば、「平和国家を標榜してきた日本の国家的アイデンティティに象徴的な変化を示す出来事」になると伝えた。日産の危機が外国防衛企業の日本進出の足がかりとなるこの状況は、日本の伝統的な自動車産業の退潮と防衛産業の急拡大が交差する局面を象徴する出来事でもある。

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