
車線変更時によく使われるウインカー(方向指示器)を出すことは、道路上の基本中の基本だ。だが韓国ではこの常識が通用しないケースが多い。韓国の2024年交通文化指数実態調査によると、車線変更時に方向指示器を出さないドライバーの割合が10台中4台以上、40%を超えることが判明した。単なる不注意とは次元が異なり、「出さないほうが合理的」という認識が一部のドライバーの間で広がっている点に問題の本質がある。
法的義務と現実の乖離
韓国の道路交通法では、車線変更時に30メートル手前での方向指示器点灯が義務づけられており(日本の道路交通法では変更3秒前が基準)、これを守らない場合は過料が科される。規定上は明確な法的義務だが、現実には適切に機能しているケースは少ない。

方向指示器の不使用は、交通事故と直接結びつかない限り現場での取り締まりが構造的に難しく、監視カメラでも捕捉しにくい。法令は整備されているものの、実質的な抑止力が働いていないのが実情だ。
「出すと損」という認識が広がる背景
さらに注目すべきは、問題の原因が取り締まりの空白だけではない点だ。韓国のドライバーの間には、「方向指示器を出すと逆に損をする」という認識が実際に存在する。車線変更の意図を事前に知らせると、隣の車線の車が入れないよう加速したり間隔を詰めたりするケースが多いという。

つまり、規則を守れば守るほど車線変更が難しくなる構造が繰り返され、ウインカーなしで素早く移るほうが現実的に有利という判断が定着してしまった。法が推奨する行動が道路の現場では逆に不利益として作用するという逆説的な状況といえる。
取り締まりが追いつかない韓国の道路文化
専門家はこの現象を単なる個人のモラルの問題として片づけることはできないと指摘する。取り締まりの体制に空白が生じ、違法行為への慣れが蓄積されて集団的な慣行として定着すると、個々のドライバーが単独で規則を守ることが逆に損になる構造が形成されるというのだ。

方向指示器の不使用問題はこの悪循環の典型例として挙げられる。当局は取り締まり強化と意識改善キャンペーンを並行して展開しているが、数十年をかけて形成された運転文化を変えるには限界があるとの見方が多い。
日本との温度差が映す、文化の違い
方向指示器の使用に対する意識は国によって大きく異なる。相互配慮の文化が根付いている日本では、方向指示器の不使用は異例な行動と受け止められる。進路変更を事前に知らせることは当然の礼儀かつ安全の基本とされており、これを怠るドライバーは社会的な批判を受けることになる。

韓国では10人中4人以上が方向指示器を省略しているという統計は、それ自体が運転文化の深い違いを浮き彫りにする。法の規定があるかどうかよりも、その規定が実際に機能する社会的文脈こそが重要であることを示す事例といえる。