
アウディは1930年代のレース史に名を残すレーシングカーを現代によみがえらせる特別プロジェクトを発表した。
アウディは1930年代に世界最速級の記録を打ち立てたレーシングカー「アウトウニオン・ルッカ」を基にした復元モデルを、7月に英国で開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで初公開すると発表した。

時速327kmを記録した1935年の伝説
アウトウニオン・ルッカは、1930年代に活躍したアウトウニオン・タイプB/C系統に連なる高性能レーシングカーで、当時のドイツのレース技術を象徴する一台として知られる。1935年にイタリア・ルッカ近郊の直線区間でフライングスタート1マイル計測において最高時速約327kmを記録し、当時の世界最速級の記録に位置付けられている。ドライバーを務めたのはドイツ出身のレーシングドライバー、ハンス・シュトゥックで、16気筒エンジンを搭載した車両を限界まで攻め、記録を樹立した。
従来のレーシングカーとは一線を画す独特なデザインも特徴で、密閉式コックピットを採用しつつ、前輪を露出させ、後輪は車体で完全に覆っている。このため「宇宙船のような自動車」と評された。

戦後に消えたオリジナルと3年の復元作業
オリジナル車両は第二次世界大戦後に行方が分からなくなり、戦時中に失われたとする記録もある。設計資料の多くも散逸しており、正確な復元は容易ではなかった。
今回のプロジェクトはアウディの歴史的車両を担当するアウディ・トラディションと、英国のエンジニアリング企業クロスウェイト&ガーディナーの協業で進められた。現存する写真や記録を基に、復元作業は約3年に及んだという。

6005cc 16気筒512PSのスーパーチャージャー
復元車両には、1936年モデルのタイプCを基にした排気量6005ccの16気筒スーパーチャージャー付きエンジンを搭載する。このエンジンは最高出力512PS/4500rpmを発生し、メタノール、高級ガソリン、トルエンを混合した特殊燃料を用いる。
車体はセルロース系シルバー塗装で仕上げられ、リア部の冷却用エアインテークやデュアル排気管など、当時のデザイン要素も忠実に再現している。

アウディコレクションに加わる1台限定生産
アウディは今回の車両を手作業で1台のみ製作しており、追加生産の計画はないとしている。アウトウニオン・ルッカは今後、アウディの歴史的車両コレクションに加えられ、主要なイベントで展示される予定だという。