
イギリス、専用V2Gサービスの導入で消費者参加基盤の拡大と経済性改善など商用化を加速 オランダ、ヨーロッパ初の都市単位V2Gエコシステム構築で実証範囲を地域規模に拡大 アメリカ・日本、災害・停電対応需要の拡大に伴い分散型電力資源として活用されている
世界の主要国が電気自動車を自国のエネルギーシステムの中核インフラとして活用する動きが加速している。
自動車業界によると、日本をはじめイギリス、アメリカ、オランダなどで電気自動車を単なる移動手段を超えて「双方向充放電」(V2G・Vehicle to Grid)技術を利用した電力資産として活用しようとする試みが本格化している。
V2G技術の仕組みと世界的な普及背景
V2Gは電気自動車のバッテリーと電力網を接続し双方向で電力をやり取りする技術である。この技術は電力制御・通信機能を搭載した電気自動車で実現できる。
電力需要が低い深夜時間帯などにはバッテリーを充電し、電力需要が集中する午後2〜5時などピーク時間帯には車両バッテリー内の電力を放電して電力網に供給する方式で、電力需給への対応とエネルギー効率の向上が図れる。車両オーナーは充電料金の割引特典や収益創出などのインセンティブを受ける。
特に、ヨーロッパの国々をはじめ、気候や時間帯によって発電量が大きく変動する太陽光・風力など再生可能エネルギーの比率が高い地域では、V2Gを活用した電気自動車が再生可能エネルギー活用の経済性向上はもちろん電力網の安定化まで可能にする有効策として注目されている。
イギリス・オランダが切り開くV2G商用化
イギリスはV2Gサービスの商用化に最も先進的な国と評価されている。専用サービスの導入など簡素化された手続きを通じて電気自動車オーナーの参入障壁を下げている。昨年、イギリス最大手の再生可能エネルギー企業オクトパスエナジーが提供を開始した初の商業用V2Gパッケージは電気自動車リース、V2G充電器設置、料金プランを一つにまとめ利便性を高めた。車両オーナーは複雑な取引プロセスなしに車両を充電器に接続するだけでV2Gサービスに参加できる。
さらに、電気自動車をV2G充電器に一定時間以上接続する場合、車両充電料金を全額割り引くなどイギリスの高い電気料金を考慮して設計されたきめ細かなインセンティブが電気自動車オーナーから好評を得ている。
オランダは電気自動車とV2G充電所、地域太陽光システムが有機的に接続されたヨーロッパ初の大規模都市単位V2G実証モデル「ユトレヒト・エナジャイズド」プロジェクトを進めている。ユトレヒトはオランダで4番目に大きな都市で、35%の建物に太陽光パネルが設置されており、昼間の電力過剰生産問題がある。
V2G技術を適用した電気自動車は余剰電力をバッテリーに蓄え、必要な時に電力網に供給する方式で再生可能エネルギー由来の電力需給の不均衡を補う。電気自動車の充放電は、システムがリアルタイムで電力需給を判断し、自動的に決定・管理する。また、災害や事故による停電が起きやすい地域でも電気自動車をエネルギーインフラの中核として活用しようとする動きも広がりつつある。
アメリカ・日本における電力インフラとしてのEV活用
アメリカのカリフォルニア州ではカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)を中心に電気自動車を地域電力網と連携させ、山火事や猛暑などによる停電状況でどれだけ迅速に電力を復旧できるかを検証している。
地震が頻発する日本でも、電気自動車を災害時の電力インフラとして位置づける動きが進んでいる。日本は2024年の石川県能登地震の際、被災地に電気自動車を派遣し、一般家庭や避難所、病院に非常電力を供給した。
