
済州島を訪れる中国人観光客の多くは、レンタカーを運転できない。国際運転免許証を相互に認める国際条約に、中国が加盟していないためだ。
しかし最近、済州道が観光活性化を理由に「中国人観光客によるレンタカー利用を認める案」を持ち出し、韓国で論争が起きている。安全に関わる問題だとして、反発も強まっている。
何気ない発言が論争を招いた
論争は2日に開かれた済州道の幹部会議で始まった。
済州道のパク・チョンス行政副知事は、「中国人の個人旅行客がレンタカーを利用できていない」とし、「数時間の講習を受ければ運転できるようにするなど、規制緩和の観点から検討してはどうか」と提案した。
これを受け、オンラインを中心に批判が拡大した。済州道は翌日、説明資料を発表し、「アイデア段階の発言にすぎず、検討または決定された政策ではない」と釈明した。
7日になっても、済州道のウェブサイトに設けられた意見投稿欄には反対意見が相次いだ。
「観光産業を一国の観光客だけに依存するのは望ましくない」、「命と安全に関わる交通問題を、経済効果だけで判断してはならない」といった指摘が寄せられた。
なぜ中国人観光客はレンタカーを運転できないのか
今回の案が出た背景には、観光客の旅行形態の変化がある。
最近、済州島を訪れる中国人観光客の約90%は団体ツアーではなく、自ら日程を組む個人旅行客だ。このうち60~70%は、20~30代と推定されている。
今年1~5月に済州島を訪れた中国人観光客は61万人で、外国人観光客全体の95万人のうち64%を占めた。
問題となるのが移動手段だ。米国人や日本人とは異なり、中国人は韓国でレンタカーを運転できない。中国が、国際運転免許証を相互に認める国際条約に加盟していないためだ。
済州道でも、これまで対策が検討されなかったわけではない。
2014年、済州道と韓国政府は、交通安全教育の受講を条件に、短期滞在の外国人へ臨時運転免許証を発行する案を推進した。
しかし、この内容を盛り込んだ済州特別法改正案は、安全上の問題を理由に国会行政安全委員会を通過できなかった。
違法な有償運送が水面下で広がっていた
レンタカーを運転できない中国人観光客の需要に入り込んだのが、違法な有償運送だ。
バスやタクシーで移動しなければならない中国人観光客の一部は、旅客自動車運輸事業法上、違法となる営業許可のない乗用車やワゴン車を利用して観光地を回っている。
済州道自治警察団の関係者は、「韓国の運転免許を持つ中国人が、2、3人単位の小規模グループを案内する違法な有償運送が横行している」と説明した。
料金は通常、1人1日5万ウォン(約5,400円)だが、観光客自身は違法なサービスだと知らない場合が多いという。
個人旅行客の移動需要は、すでに制度の外で満たされていることになる。
今回の発言は、増加する個人旅行客と、それを支える制度との間にある空白を浮き彫りにした。
済州道はこの案を事実上「なかったこと」として整理したものの、安全と観光活性化をどのように両立させるのかという課題は残っている。
規制を緩和する場合も、現行制度を維持する場合も、今後の対応はこの制度上の空白をどのように埋めるかにかかっている。