
中国市場において、水上走行能力を備えたSUVが登場し、技術的関心を集めている。Chery傘下ブランドであるJetourが公開した「Jetour G700 Ark Edition」は、一般的なSUVの概念を拡張するモデルとして注目されている。最大渡渉深度は約970mmとされ、従来のオフロード車を上回る水中対応性能を特徴とする。

水上走行という発想自体は以前から存在していた。TeslaのCybertruckについても、一時的に浮上し河川を横断できる可能性が示唆されたことがある。しかし現時点まで、実際の水上走行性能が公式に実証された例は確認されていない。その一方で、Jetourは実演を通じて技術的実用性を提示した点が特徴となる。

Auto China 2026での水上走行公開
Jetourは2026年開催のAuto China 2026において、水上走行テストを一般公開した。このテストでは、車両が安定した姿勢を維持しながら水面上を移動する様子が確認されている。また、2025年10月に公開された長江横断映像についても、CGではなく実際の走行映像だったことが後に裏付けられたとされる。

「GAIA Ark Tech」と独立水中推進
本モデルの技術的中核となるのが「GAIA Ark Tech」と呼ばれる統合制御システムである。渡渉モード作動時には車室を完全密閉し、通常の車輪駆動系を切り離したうえで、独立型の水中推進システムを起動する構造を採用する。これにより、通常のSUVとは異なる水上移動能力を実現している。

水中推進機構には800Vシステムを利用した電動スクリュー方式が採用される。電動モーターによって推進器を駆動することで、水中でも安定した推進力を確保する仕組みだ。また、主要部品にはIP68等級の防水設計と専用密閉構造が与えられ、電動車両として必要な耐水性能にも配慮されている。

892PSデュアルモーターEREV構成
パワートレインは前後輪それぞれに独立したモーターを配置するデュアルモーター構成となる。さらに、2.0リッターターボエンジンは駆動用ではなく発電専用として機能し、レンジエクステンダーEV(EREV)方式を採用する。システム総合出力は892PS(665kW)、最大トルクは1,135Nmに達すると公表されている。

駆動用電源には31.4kWh容量のリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載する。EV単独での航続距離は約150kmとされ、エンジン発電を併用した場合の総航続距離は約1,400kmに及ぶという。長距離走行とオフロード性能の両立を意識した構成であることがうかがえる。

ラダーフレーム3基デフロックの本格オフロード
車体にはラダーフレーム構造の専用オフロードシャシーを採用し、3基のデフロックを備える。これにより、悪路走破時の駆動力配分を最適化し、高いトラクション性能を確保する設計となっている。水上性能だけでなく、本格的なオフロード性能も重視した仕様である。

さらに、本モデルにはその場で旋回可能な「タンクターン」や、車体を真横へ移動させる「クラブウォーク」機能も搭載される。電動制御技術を活用することで、狭隘地での取り回し性や悪路からの脱出性能向上を図っている。G700 Ark Editionは、電動化時代におけるSUVの新たな差別化手法を提示するモデルとして位置付けられている。