
テスラ新型コンパクトSUV開発へ——「モデル2」凍結から一転、普及型EV戦略を再始動
米テスラが、低価格帯の次世代コンパクトEVの開発を本格化させていることが、ロイター通信による9日(日本時間10日)の報道で明らかになった。
新型コンパクトSUVの仕様と価格帯
ロイターの報じるところによると、テスラは「モデル3」や「モデルY」といった既存車種のアップデート版ではなく、完全に新しいプラットフォームを採用したコンパクトSUVの開発に向け、製造工程や部品サプライヤーとの調整を本格化させている。関係者の証言によれば、新型車の全長は4,280mm前後と、主力SUV「モデルY」を下回るサイズ感で設計されている。注目の販売価格については、現行ラインアップで最廉価のセダン「モデル3」(米国価格3万7,000ドル/約574万円)を大幅に下回る水準で策定される公算が大きい。
バッテリー・パワートレイン構成
この新型コンパクトSUVは、モデルYに比べてバッテリー容量を削減し、車両重量を約1.5tまで軽量化することで製造コストを劇的に抑える狙いがある。パワートレインはコスト抑制の観点からシングルモーター仕様に限定される予定で、これに伴い航続距離はモデルYの基準(約500km)を一定程度下回る見通しである。
生産計画と発売スケジュール
テスラは早ければ年内にも中国のギガファクトリー上海で生産を開始する計画で、米国および欧州拠点への展開も視野に入れているとされる。ただし、プロジェクトは依然として開発の初期段階に留まっており、具体的な発売スケジュールが公式に決定されたわけではない。
「モデル2」凍結の経緯と戦略転換の背景
テスラは数年前にも、2万5,000ドル(約388万円)前後の低価格EV、通称「モデル2」の開発を表明していたが、2024年にこの計画を事実上凍結していた。当時、イーロン・マスクCEOは「無人自動運転車の実現が目前に迫っており、人間が運転することを前提とした普及型モデルの製造は合理性に欠ける」として、自動運転専用車両へのリソース集中を明言していた。
テスラが再び普及型EVの開発に注力する背景には、深刻な販売不振がある。2026年の世界販売台数が3年連続のマイナス成長に陥る懸念が高まる中、既存のプレミアム路線だけでは持続的な成長が困難であるとの危機感が強まっている。特に米国で電気自動車の税額控除が撤廃された影響は大きく、新世代の消費層を惹きつけるには、現行のモデル3であっても依然として高価であるとの評価が支配的である。
自動運転戦略との両立——サイバーキャブと普及型EVの二本柱
テスラは全車種への自動運転機能の搭載を究極の目標としているが、各国の規制当局による承認やインフラ整備が追いつくまでには、まだ数年の歳月を要するのが現実である。そのため、ステアリングを排した自動運転専用車「サイバーキャブ」を今月中に量産体制に乗せる一方で、現実的な収益基盤として普及型EVの必要性を再認識した格好である。
テスラは22日に第4四半期決算の発表を予定している。この日の米国株式市場において、テスラの株価は新型SUV開発のニュースを受けつつも、最終的には0.7%の微増で取引を終えた。