
米国・イスラエルによるイラン攻撃に端を発した軍事衝突が長期化した場合、中国や日本を中心とするアジアの自動車業界が甚大な影響を受けるとの懸念が広がっている。特に中東市場で高い占有率を持つトヨタ自動車をはじめとするメーカー各社は、物流の混乱や需要減退への対応を迫られている。
中国メーカーに最大の被害予測
市場調査機関バーンスタイン・リサーチの分析によると、イランでの紛争とホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、アジアの自動車メーカーは深刻な打撃を受ける見通しだ。なかでも中国メーカーの被害が最大になると予測されている。イランは中東最大の自動車市場であり、昨年の中東全体の販売台数の約38%を占めた。
現在のイラン市場は、欧米の制裁により主要な西側ブランドが撤退しており、中国企業が事実上の主要外資ブランドとして市場を独占している。統計によれば、昨年の中国の自動車輸出量のうち約17%(約50万台)が中東向けであり、イラン市場の混乱は中国企業の輸出戦略に直撃する形となる。
日本メーカーにも波及するリスク
事態が長期化すれば、中国勢のみならず日本メーカーへの影響も避けられない。トヨタはサウジアラビア、クウェート、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)などの主要国において、今月初時点で約17%という極めて高い市場シェアを維持している。
軍事衝突により当該地域への物流が制限されるほか、ホルムズ海峡の封鎖に伴う原油価格の高騰が重なれば、主力である内燃機関車の販売に直接的な打撃となる。バーンスタインは「最大のリスクは、燃料価格の上昇が世界経済の信頼を損ない、湾岸地域を超えて世界的な自動車需要の崩壊を招くことだ」と警告している。
トヨタ、先制的な減産対応
こうした懸念を受け、トヨタはすでに先制的な対応に乗り出した。中東向けの物流混乱に備え、3月から4月にかけて生産量を約4万台削減する計画を部品サプライヤーへ通知した。対象には、同地域で人気の高い「ランドクルーザー」などのSUVやセダン、商用バンが含まれる見通しだ。
アジアの自動車各社にとって、中東は成長を牽引する重要な市場であったが、地政学リスクの顕在化により、供給網の再編や販売計画の抜本的な見直しが避けられない局面を迎えている。