
メルセデス・ベンツが、高速道路のみならず複雑な都市環境に対応する次世代の先進運転支援システム(ADAS)を公開した。メルセデスは、サンフランシスコで新型「CLAクラス」のプロトタイプを用いたデモンストレーションを行い、次世代システム「MB.DRIVEASSISTPRO」の実力を披露した。
電気自動車専門メディア「InsideEVs」によると、この新システムは従来の高速道路中心の支援機能とは異なり、市街地の交差点やラウンドアバウト(環状交差点)、混雑した交通流、さらには複雑な駐車操作までを処理することを目指している。メルセデスはこれを「運転者に取って代わる技術ではなく、都市走行のリスクと負担を軽減する協力型パートナーである」と定義した。
「MB.DRIVEASSISTPRO」は、NVIDIAの「DRIVEAV」ソフトウェアを基盤としたレベル2の「ポイント・ツー・ポイント(地点間)」運転支援機能を搭載している。最大の特徴は、システム作動中も運転者が常にステアリングホイールを握り、道路を注視しなければならない「ハンズオン」を前提としている点だ。手放し運転(ハンズオフ)を追求する競合他社とは対照的に、メルセデスは複雑な都市環境においては、運転者が即座に介入できる状態を維持することが安全の鍵であるという立場を貫いている。
メルセデスの自動運転・支援運転担当マネージャー、ルーカス・ボルスター氏は「都市部での走行中にステアリングから手を離すと、緊急時の反応時間が長くなる恐れがある」とし、安全目標の達成には運転者の継続的な関与が不可欠であると説明した。
ハードウェア構成も極めて強力だ。CLAのプロトタイプには、10台のカメラ、5台のレーダー、12台の超音波センサーに加え、NVIDIAベースの高性能オンボードコンピューターが搭載された。メルセデスは、実走行データとシミュレーションを組み合わせたAI学習に加え、複数のアルゴリズムを並行して実行する冗長性(リダンダンシー)を持たせることで、認識エラーの可能性を最小限に抑えている。
このアプローチは、カメラのみに頼るテスラの「Vision-Only」戦略とは一線を画す。メルセデスは、カメラ・レーダー・超音波センサーを組み合わせた「マルチセンサー・フュージョン(多重センサー統合)」方式こそが、都市走行の安全性を保証する最適解だと主張している。NVIDIAのアリ・カニ氏は「これほどの安全性と冗長性を備えた乗用車は、現在の市場には他に存在しない」と評価した。

サンフランシスコでの試乗中、プロトタイプは交差点での一時停止や非保護左折(信号による制御がない左折)、歩行者や自転車への譲り合い、二重駐車車両の回避などをスムーズに処理した。また、対向車のヘッドライトの動きから駐車車両かどうかを判断するなど、高度な予測能力も披露された。
さらに、運転者がいつでもステアリング操作を優先できる「協力的操舵(CooperativeSteering)」機能も提供される。システムは完全自動運転を目指すものではなく、あくまで「監督者としての運転者」をサポートする位置付けだ。ボルスター氏は「見知らぬ都市での運転ストレスを、システムを監督するという形で軽減できる」と、その心理的メリットを強調した。
「MB.DRIVEASSISTPRO」は次期CLAクラスから順次採用され、各モデルに拡大される予定だ。メルセデスは、高速道路でのハンズオフに慣れた消費者が、この「都市型ハンズオン支援」の価値をどう評価するかが普及の鍵になると見ているが、その実用性と安全性には強い自信を示している。