
中国の電気自動車(EV)最大手BYDが、配車サービスや法人車両に特化した新ブランド「Linghui(領匯)」を正式に発表した。中国工業情報化部(MIIT)が2026年1月に公開した最新の公示により、既存の人気モデルをベースとしたLinghuiのラインナップが明らかになった。今回のブランド新設は、BYDが「低価格・業務用」のイメージを別ブランドへ分離し、本体ブランドのプレミアム化を加速させるための戦略的決断と分析される。
■業務用ブランド「Linghui」の構成
Linghuiブランドは、BYDの主力セダン「秦Plus」と「漢」、そして多目的車(MPV)「漢DM-i」を再構成したラインナップとなる。具体的には、秦Plusは「LinghuiE5」に、大型セダンの漢は「LinghuiE9」へと名称を変更。また、漢DM-iの派生モデルは「M9」として同ブランドに加わる予定だ。
中国の自動車業界は、BYDが業務用車両を別ブランドとして独立させた点に注目している。これまでBYDの車両はタクシーや配車サービスで広く採用されてきたが、これが個人消費者の間で「大衆車・業務用」という印象を強め、ブランド価値の希薄化を招くとの指摘があった。BYDはLinghuiを通じて旺盛な業務用需要を吸収しつつ、本体ブランドの高級感を維持する方針だ。
■プレミアム戦略の保護が核心
この動きは、BYDが近年注力している高価格帯モデルの販売急増とも合致する。昨年、オフロードブランド「方程豹(ファンチェンバオ)」などの高級モデルの販売は前年比で3倍以上に急増し、全体の収益性を牽引した。MIITに登録されたモデルは通常、公示から数週間以内に投入されるため、Linghuiブランドの車両も近々路上に姿を現す見通しだ。
■激化する中国新車市場の競争
現在、中国市場では新車競争が極めて激化している。ファーウェイと奇瑞汽車の合弁ブランドや、現地SUV市場を狙うメルセデス・ベンツの新型6人乗りモデル、さらにジーカー(Zeekr)や上汽大衆汽車などが最新技術を投入した新モデルを次々と発表している。
これまで低価格帯を主戦場としてきた零跑汽車(リープモーター)までもが、高級モデル「D19」でプレミアム市場への参入を予告する中、BYDによるブランド二元化は、競合他社の攻勢に対する先制措置といえる。主力モデルである「漢」や「秦」がタクシーとしてのイメージで定着するのを防ぎつつ、高級車市場での支配力を揺るぎないものにする構えだ。