
テスラの覇権が揺らいでいる。かつて80%に達していた米国電気自動車市場のシェアは、8月時点で38%まで落ち込み、2017年以来初めて40%を割り込んだ。依然として単一ブランドとしては最大シェアを維持しているが、「絶対的王者」の地位は危うくなっている。
市場調査会社コックスオートモーティブによれば、先月の米国電気自動車市場は前年同月比で14%成長した。この急激な販売増加には、今月末で終了予定の連邦EV税額控除制度が大きく寄与したとみられる。しかし市場全体が拡大する中で、テスラの販売増加率は3.1%にとどまり、競合他社と比べて明らかな減速傾向を示した。
テスラは新型車「サイバーキャブ」で巻き返しを狙う。しかしこのモデルは2人乗りで、従来の運転装置を持たない完全自動運転車であり、一般消費者の支持を得るのは難しいとの見方が強い。加えて、米国のほとんどの州では依然としてステアリングホイールなど基本的な操作装置の装備が義務付けられており、実用化には法的な障壁も多い。

一方、既存の自動車メーカーは技術の差を急速に縮め、手頃な価格帯の新型EVを次々と投入している。業界では、こうした動きがテスラの独走を阻む大きな要因になっていると分析されている。
コックスオートモーティブの産業インサイトディレクター、ステファニー・バルデス・ストリティ氏は「テスラは自らをロボティクスやAIの企業と位置付けようとしているが、結局のところ自動車メーカーである以上、新型車がなければシェア低下は避けられない」と指摘。「伝統的な自動車メーカーは危機感を持って魅力的な製品を投入し、実際に成果を上げている。この傾向は9月以降も続くだろう」と予測した。